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十二調子事 (No. 2719_ ) in Vol. 84
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No.2719
十二調子事
恩徳院之御撰云
| 正。鳧鐘調 | 甲寅 |
| 二。雙調 | 乙卯 |
| 三。上無調 | 戊辰 |
| 四。斷吟調 | 己巳 |
| 五。黄鐘調 | 丙午 |
| 六。一越調 | 丁未 己未 |
| 七。勝絶調 | 庚申 |
| 八。平調 | 辛酉 |
| 九。下無調 | 戊戌 |
| 十。神仙 | 己亥 |
| 十一。盤渉調 | 壬子 |
| 十二。鸞鐘調 | 癸丑 己丑 |
| 此内丁未己未ヲハ一ト可意得 | 癸丑己 丑又如 |
| 斯 | 日モ時モ皆如此可意得也 |
一。雙調ハ平調ノ母也。又妻也
將知阿彌陀ハ藥師ノ夫也。肝臟ハ妻ニテ
肺臟ハ夫也。肺肝ノ臟ニ嫁ス時。必ス我等
眠也
一。鳧鐘調ト雙調ハ勝絶調平調ノ母也ト
云フ事ハ。栗トイフ木ハ秋來テ西風ニ葉
落。其葉終ニ鐘トナル。鐘ハ西ヲ主トル故
ニ。彼ノ木ヲ西木ト書也
一。上無調ハ土也。春ノ土ハ自木默シテ火
ヲ待ツ。火木ハ天ニ上ル理リニ隨テ辰月
ヲ上無調ニ用フ
一。斷吟調ハ土金火ヨリ出タル調子也。故
如何トナレハ。四絶九厄ハ巳酉丑ト云。金
ハ必平調ナレハ。平調ノ分散ナル故ニ。斷
吟ヲ巳ノ月ニ用。平調ノキサス所ナレトモ。
又一越ヲ少兼タル故ニ。巳トニ用。火親王
ノ位ナルカ故ニ巳ノ月ニ用フ
一。黄鐘調ハ火也。盤渉調ノ夫也。一越ハ火
也土也。一越ヲ六月ニ用フル故ハ。春ノ土
ハ木剋土トイフ。秋土ハ金ナレトモ。冬ト
ハ剋シテ土剋水ト云ハルル也。夏ノ土ハ火
ヨリモ相生シ。又金ヨリモ相生ス。又是王
ナル故ニ。六月ヲ一越ニ用ヒタリ。就之五
鬼都歸リトイフ事有リ。丑未辰戌ニ生榮
老死ト云フ事ヲ合スル也。春ノ土ハ丑ノ
方ニテ生レテ。夏ノ土用ニハ未ノ方ニテ
榮。秋ハ辰ノ方ニテ老シテ。冬戌方ニテ死
ス。冬ノ土ヲ犯ス事ヲ忌ハ王ナレトモ。死
ノ位ナルカ故ナリ也。又土ヲ五鬼ト申ス
事ハ。木ハ土ヨリ生シテ西風ニ枯レ。火土
ヨリモ生シテ水ニキヘ。金ハ土ヨリモ生
シテ土ニウツモレ。水ハ土ヨリモ生シテ
寒風ニ氷。次第ハ如是各轉變ヲ現ストイ
ヘトモ。土ハ四節土用共ニ本土ヲ不去故
ニ五鬼ト云。サレハ一越ヲ以テ調子ノ初
トス。又六月ヲ一越ニ用フルコトハ。土ハ
火ニ合テ堅マツテ佛像トナルト云フコ
ト。本文ニ隨テ丁巳ニ一ツニ用
一。勝絶調平調ハ。何モ木ノ夫トナレトモ。
而モ金ハ木ヲ平クル故ニ平調ト云。下無
調ヲ九月用。神仙調ハ十月也。盤渉調ハ神
仙ノシモナリ。水ハ上ヨリ流ル故ニ。先盤
渉上ニ用タリ。盤渉ノ分散スル也。雖然水
ハヤ鳳凰ノ位ニナリテ土ノ王タルヘキヲ
待ツ故ニ。盤渉ヨリモ下ル聲也。水土一體
ノ本文ニ任テ。鸞鏡ヲ土ト水トニ任也。又
調子ノ根本ト申スハ平調也。五輪ノ中ニ
風輪ハ金ナリ。調子ハ五臟之息ニテアル
故ニ。諸ノ調子ヲ皆平調ト意得也。サレハ
聲ヲ立ル所モ立サル時モ唯平調也。平調
ハ風ナルカ故ナリ。サレハ風ト云字ニ。タ
ツ･イル･ハタラク･ウゴク･ネル･ヲキル･シ
タガフ･フル･マフ･タヨリ･ナビク･ナドト
云讀アリ。爾レハ聲ハカリヲ調子トハ意
得ヘカラス。叫喚大叫喚之烟ヲンムセヒ
テ歎クモ。亦菩薩佛界之樂モ皆風ノアヤ
ツリ也。風餘ノ物ニ勝レタリト云故如何
トナレハ。土ヨリ下ハ三風輪也。先金輪際
アツテ。其ノ下ニ水輪アリ。下ニ風輪ア
リ。サレハ世界ノ柱ハ風ナリ。世界ヲ落ツ
ケシト吹クモノナリ。風輪際ノ風ヲ毘監
風トイフ。又天ニ風アリ。夫レヲ監風トイ
フ。祕事ニ云。毘監風ハ母ノ氣也。風輪ノ
上ニ水ナリト云ハ。父母和合ノ所赤白二
體之水也。是ヲ最初ノ水ト云。其ノ水先骨
ト皮トニナル。其後藏腑出來ルナリ。血肉
等之アルヲ。金ノ上ニ土アリ土ノ上火木
アリナト云也。是又調子ノユユシキ祕事
也。次ニ呂律之事ハ十二調子ヲ半分ル也。
是ヲ樣々ニ沙汰スル人多シ。誠ニ外道魔障
也。千字分ニ任テ是ヲ云ヘハ。六律ハ陽。六
呂ハ陰也。律呂調陽ト云。註ニ十一正五三
七九ハ律也。盤渉鳧鐘調黄鐘上無勝絶調下
無調ハ陽也。六四八十十二二ハ是陰也。一
越調斷吟調平調神仙調鸞鏡調雙調是ハ呂
也。此六律ヲ六色六根トシ。六呂ヲ以テ六
塵六道トス。又詩歌ヲ學ハンニ。六儀ハ六
律也。六體ハ六呂也。十二律ノ分別是ニス
クルル事ナシ。五音ヲ呂律ニナスコトハ。
前段ニ申故ニ。是ニ沙汰無シ。努努音聲ヲ
疎ニナシ調子ヲ惡ク不可心得也
一。弘法大師云。此世界ヲ梵ニハ云娑婆。
此ニハ云堪忍。又異名ニ色塵世界ト云テ。
音聲ヲ宗トセハ。可ト至佛果見タリ。然
佛經ヲ讀マンニ。如何ニモ商ノ聲ナルヘ
シ
一。傳教大師云。聲爲佛事。名之爲經云。畢
竟此流ニ調子ヲ分ルコト餘流ニ替レリ。
調子一ニ九宛ヲ持スレハ。十二調子ニハ
百八也。佛界ニハ音聲ノ有無ヲ不立故ニ。
九界ニ表シテ如是分タリ。一界宛ニ又各
九界アル故ニ。百八七十二ニ分ケ。其ヲ又
九千七二十ニナシ。九萬七千二百九億七
萬二千等ニ分ケタリ
十二調子之事
一。一越ハ諸音ニ超越スルニ依テ越ルト
云字アリ
一越ヨリ發テ一越ニ納ル
一。斷吟ハ何モナキ時キヲ吟シツクシ依
テ斷金ト云字アリ。是平調ノキサシ出ル
處ナリ
一。平調ハカラズフクマフ十八ニ引藏タ
ルニヨツテ平ナリ
一。勝絶調ハ平調ヨリ勝レタルヲ勝絶ト
云。少シカツタルヲタイジキ調ト云。此ノ
タイシキ調ハ。十二調子ノ外。絃ノトキモ
入ルカ。此ノ勝ノ字ハスクルルト云字ナ
レドモ。タエルト云讀アリ。平調ノツクル
處ナレハ云爾。勝絶之二字タエタルトヨ
ム也
一。下無調ハ悉クツキテ下モニ調子無キ
故云爾。又一説ニハ上無調ハ天也。下無調
ハ地也。天モ限ナキ故ニ上無調ト云也。地
モ無量ノ故ニ下無調トイヘリ。是雙調ノ
キサシ出處也
一。雙調ハ上無調下無調カ父母トナリテ。
雙調ヲ初トシテ黄鐘平調盤渉一越等ヲウ
ミ出ス。五音ヲ初ニウマル故ニ。ナラヘシ
ラブル也
一。鳧鐘調ハ牙齒舌内ニタヘタルヲ。ヤガ
テ鳧氏ノ人テアリタル鳧氏ト申人吟シ出
シケル故ニ鳧ト云。鐘ハ黄鐘近キ故ニ云
爾。サレハ鳧鐘調鐘ノ字ツキカネト云字
能也
一。黄鐘調ハ甲ガ平調乙ガ一越ニテ有故
ニ。黄ナル鐘ト書ク。土ハ黄ニシテ。カネ
ハ白キ故ニ。黄鐘ハ赤シトモ又白シトモ
ユヘ。甲ニヒカレテ鐘ノ字ヲ用。乙ニヒカ
レテ黄ノ字ヲ用。平調カネナル故ニツキ
カネヲ用
一。鸞鏡調ハ常ニ人ツバメノ鏡トイフ文
字ナレハ。先云ナリトモチヒタリ。諸鳧ト
モニ雨風總シテ一切ノ音聲ニウツル故
ニ。一調子ノコラス唯ランノカカミト可
意得。漢ノ武帝ノ御時。天竺ヨリ鸞鳥ト云
ヲ奉ル。此ノ鳥鳴クコトナシカクイツク
シキ鳥聲ヲ聞タランニハ。イカハカリ面
白。是ヲナカセタラン輩ニハ。所望ニヨル
ヘシト宣旨アレハ。アル女參内シテ彼ノ
鳥ニ鏡ヲ見セケレハ。頓テ鳴キケリ。其聲
妙ニシテ。調子ハ盤渉ニ少シフクミケル
ヲ。今ノ世マテ用ヒツタヘ。鸞鏡ト云。鸞鳥
鳳鳥ノ事。ツハメノ字ニアラス
一。盤渉調ハ二説アリ。一説ニハワタカマ
リワタル。一説玉盤ヲワタルト云。唯イカ
ニモサヘタル調子ナリ
一。神仙調ハ盤渉去ル故ニ神仙調ト云。タ
マシイ去ルト云讀アリト云故ナリト云。
仙ノ字ニハ必サルト讀アリト云故ニ。セ
ントヨム
一。上無調ハ上段ニ云カコトシ
已上
一。龍吟調ハ下無調之名也。彼伶倫水底ニ
龍ノ鳴ヲ聞キテ吟シタリ。サルニ依テ下
無調ナレハ龍吟調ト云爾也
一。鳳音調ト云ハ上無調也。ヤカテ鳳凰鳴
ク調子也。雖然鳳凰ヲ口律ニナス時ノ沙
汰ニハ。又上無調ハカリニハカキラス。宮
商角徴羽ニ當ル所ニ。先一越ノ初調ハ自
喉出ル聲ニテ。而モ有ルカ無キカノ聲ナ
ルヘシ。平調ノ初調ハ喉ト舌根ニ通。雙調
ノ初調早口ノ内ニ出ツ。黄鐘ノ初調舌ノ
先ニアタル。盤渉初調脣通 問云。脣ハ脾
臟ニ通ズ。爾ラハ一越ニテコソアルヘキ
ヲ。盤渉ト云コト如何 答云。水土一體ノ
故ニ云爾
五音ヲ吟スル心持之事
一。宮ヲハ山川ノミナキルカ如クセヨ。是
ハ異聲無クシテサツサツトシタル故タト
フ
一。商ハナシウチエホシキタル男ノ萩ノ
ツエヲククル如クセヨ。此タトヱヲ思フ
ニ。ハギノツヱヲモ不落。ヱボシノナシウ
チヲモ不落樣ニククルヘシ。□□ニモス
コシヒキケレハ。宮ニチカクマタアカレ
ハ。角ニチカシ。是聲誠ノ大事聲ナルヘシ｣
一。角ハ小野皇村申義ハ。鐵棒ヲ綿クルミ
タル樣ニセヨ。上宮上人ノ儀云クロガネ
ノ木ニ金ノ花咲タルヤウニセヨ。何レモ
心ハ一也。ツヨクウツクシクトノ儀也
一。徴ハ霞ノ内ニ鶯ノヲトツルカ如クセ
ヨ。サレハアラケナカラヌ樣ニユルヘシ｣
一。羽ハ柳ノ糸風ニフカルル如クセヨ。タ
ダシヅカナルベキヲヤ
吟五音知事
先其時ユイ出シタル聲ヲ聞テ。宮商角徴
羽ニ裁テ。其レヲ聲ノ及フ程吟シノボセ
テ。聲ノツマル所ニテ。或ハ羽徴角商宮ト
モ。或ハ徴角商宮羽トモ吟シ下スニ。其レ
ヲ何返モ聲ノアル程吟シ下シ。羽ニツマリ
テ徴ノユワレサルヲ平調トス。徴ニツマ
リテ角ノユワレサルヲ雙調トス。角ニツ
マリテ商ノ不云ヲ黄鐘トス。商ノツマリ
テ宮ノ不云ヲ盤渉トス。宮ノツマリテ羽
ノ不云ヲ一越ト云。總シテ調子ヲ翫ニハ。
初調ニ聲ナシ三調聲無シ
十二調子ヲ空ニ聞事
一。脣ヲモヨク閉。齒ヲモヨククヰツメテ。
舌ヲ以テ齒ヲイカニモサシハツテ吟ス
ル。是斷吟ト云
一。齒ト脣ヲハ本ノ儘ヲキテ。舌ハカリヲ
引キテ吟スルヲ。平調ト云
一。齒ヲ少スカシテ。脣ハカリヲ閉テ吟ス
ルヲ。勝絶調トス
一。下無調ハ齒モ脣モタタアリテアケ吟
ス
一。雙調ハ舌ノサキヲウヘヘマクリテ。ヤ
カテ上ノアギヲサシハル樣ニシテ吟スヘ
シ
一。鳧鐘調ハ舌ツツトマリ入レテ吟スベ
シ。少クビヲ引可入
一。黄鐘ハ鼻ノ内ヘ聲ノ入リタル調子也
一。鸞鏡ハ鼻ノミネヘ聲ノコトウルヘシ
一。盤渉ハ目二之間ヘ答フル聲ヲ云
一。神仙調ハ額ノ中ヘ答ヘル聲ヲ云也
一。一越調ハ頂上ヘ答聲ナルヲ云也
已上
十二律ノ上ニテ呂律分ケ調子ヲ時ニ
アツル前後之事
一。唐ニハ律呂ト云。此國ニハ呂律ト云。呂
ヲハ聲ト讀ミ。律ヲハコヘトヨム。祕事ニ
云。呂ヲハニコルトヨミ。律ヲハスムトヨ
ム
問云。呂ハ陽。律ハ陰ナリ。スムヘキヲハ
ニコルト讀ミ。ニコルヘキヲハスムト讀
ム。大ニ不審也 答云。二アルモノハ一タ
タス。呂律和合儀也。男ハスムモノナレト
モ。女ニハアヘハニコリ。女ハニコルモノ
ナレトモ。男ニアヘハスム。下ルヲ呂ト
云。上ルヲ律トス。又呂ノ内ニモ律アリ。律
ノ内ニモ呂在リ。イカニモ下ル調子也ト
モ。登コトアラハ律ナルヘシ。又ノホル調
子也トモ。下ルコトアラハ呂ナルヘシ
一。宮者國ニハ都ヲ以テ中央トス。京ニハ
内裏ヲ以テ中央トス。天下ニ宮多シトイ
ヘトモ。誠ハ宮禁ヲ以テ内裏トス。一越ハ
中央ヨリ出調子也。去レハ都ノ位ト云。脾
ノ藏ヲ主トス
一。商ソコナイヤフルトヨム。秋ノ本調子
ハ平調也。秋ハ必西ヨリ來ル。西風ニハ千
草萬木悉ク傷ラレテ。無常ノ體ヲミスル
故ニ。平調ヲ商ノ位トス
一。角ハ雙調也。是ヲ角ト云ニ其説多シ。先
一説ニハ。雙調ハ春ノ調子。凡肝臟ヨリ出
シ調子膽ノ腑ニハ青キ角アリ。其故ニ雙
調ヲ角ノ位トス。誠ノ角ニハ非ス。春ヲマ
チ得テ千草萬木ノモヘ出ルハ。豈ツノニ
非スヤ。又説ニハ。角ノ字ニアラソフト云
フ讀アリ。是ハ漢ノ武帝ニ御藥ヲ奉ル所
ハ。ガンゲン殿ニシテ。樂ヲ奏シテ。彼ノ仙
女トモ目出度舞。其ノ時ノ調子也。雙調依
之彼角ノ字ヲアラソウトヨミ。袖ヲヒル
カヘシマケシト舞タル故ニ如斯
一。徴コトハルユリスヘルトヨム。サレハ
徴ノ位ハユル聲也。必モノヲクトクハユ
ル聲也。徴ハ黄鐘ナリ。心臟位ナリ
一。羽ハ盤渉也。霓
スル樂ノ本調子ニテアル故ニ。羽ノ位ナ
リ。腎臟ヨリ出也
承應第二暦七月中旬
南嶽居住之刻遊於朝譽公之門得澤徳甚
| 深寔言語不足謝一日此書於請 | 余 | 時當不 |
| 也者也一笑 | 云云 |
于時元文五年庚申四月於普門院以淨菩
提院朝譽師之本書寫之畢
沙門廉峯
明和九年壬辰猛春九日以普門院廉峯師
之御本於清淨心院輪下寫得之了
南山進流末徒寛光隆英房
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