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開始行:
※以下の論考は、2012年7月16-22日にハンブルク大学にて開催さ...
*人文情報学を遠望する [#zde0359c]
(日本語訳:八尾 史 日本学術振興会特別研究員)
**序:多様性の相違 [#m2784517]
***プロローグ:人文情報学の多様性と変化 [#c3600e66]
この貴重な機会を与えられたことは、わたくしにとってまこと...
この会議の数々の注目すべき点のなかでわたくしがもっとも注...
そのうえ人文情報学が、自然科学者たちとのこれまでにない共...
***この講演の扱う範囲:人文学から人文情報学への円滑な連続...
この会議で幅広い話題が扱われているのとは反対に、わたくし...
わたくしがこの主題をとりあげる理由はごく単純です。ここに...
しかし、これら二つの学問のあいだには亀裂があり、それは人...
わたくしたち人文情報学者がかかえている問題はすべてさしせ...
***行為者志向の視点から行為志向の視点へ [#c2611ea8]
この問題についてのわたくしの結論は、くりかえしになります...
しかしこの見解には、一見してみえるよりももっと重要な意味...
>「文化は、どのようにして、そのうちのきわめて重要と思われ...
これは高名な歴史学者ロミラ・ターパルによって、歴史学者た...
一方の観点というのはできごとの起こる時代のスケールです。...
もう一方の観点は問いの意味論的構造のそれです。その問いに...
自己同一性の変容という話題は、行為者志向から行為志向への...
**人文情報学の求心的多様性 [#l45e0bce]
***人文学における二種の多様性:対象と方法 [#m98ff948]
では、人文情報学の遠望を得るための必須条件のひとつとして...
まず第一に、人文学は全体として多様な領域であり、学際的研...
はじめに人文学の多様性の性質に注意をはらいましょう。人文...
「研究の対象」にかかわる第一の種類の多様性は、人類の言語...
***方法の多様性:人文学における三つのアプローチ [#cb1ee080]
人文学はもうひとつの種類の多様性をもちます。これは人間の...
ひとつのアプローチは、記録された言説と外部の事件あるいは...
もうひとつのアプローチは、テクストの言語の外部にあるもの...
他のアプローチは、これら二つと比べて言語の機能から距離を...
これらの人文学の方法の相違は、存在、意識、言語という科学...
***さらなる拡散への統合の努力 [#jc4bcb54]
ここでわたくしたちは人文学の多様性のもうひとつの起源に注...
ある研究領域の多様性が飽和点に達すると、関連する領域に、...
しかしこの統合の努力は、時間がたつとともに、人文学の全体...
このように、歴史の流れのなかで人文学が展開するとは、概し...
***「忠実性」としての人文情報学の二種の多様性 [#o53d0f15]
その一方で、人文情報学の領域にみられる多様性ははなはだこ...
人文情報学がしていることは、原則的に、人文学によってもた...
***人文学の共有言語としての人文情報学 [#va9ae8c5]
第一の、人文学の多様性に由来する人文情報学の多様性をすこ...
人文情報学の使命のひとつはTEIの事業に代表されるように、人...
これは、古写本や本のなかに、暗示的なかたち、あるいは明示...
いるこれまでに発展した多様性を、デジタル媒体の領域に統合...
人文情報学のこの求心的傾向は、ことなる学問のあいだにメタ...
ある研究領域での言語共有の問題は、数字と記号によって研究...
***技術革新における人文情報学の多様性 [#daf3a850]
こんどは人文情報学の第二の多様性、つまり技術革新によって...
人文情報学はデジタル媒体という、人文学者たちにとってこれ...
しかしこの多様性は、自分たちの何者たるかが不変であると信...
実際のところは、これとまったく逆であると思います。人文情...
実に、技術のやむことのない変容のさなかにおける持続可能性...
**世界史における近代人文学 [#y7ad44a4]
***近代人文学の出現 [#gfa660c0]
それでは人文情報学の遠望の背景となる問題のなかの次の話題...
哲学史に代表される人文学の歴史はこれまで、おもに古代ギリ...
しかし、未来志向の性質に関して人文情報学の可能性を探求す...
ルネサンス時代のヨーロッパ人が自分たちの文化的起源を古代...
この古代言語の発見と東洋の認識とは、人文学の遠近法を地球...
***近代人文学とオリエンタリズム [#df2c2168]
東洋の人文学研究のグローバリゼーションが多かれ少なかれ東...
人文学のグローバリゼーションの意義は、歴史のはじまり以来...
東洋と西洋のあいだの出会いにおいて何がおこったかをできる...
***人文学の真理に対する態度 [#jcde9fdb]
そのようにすれば、東洋を発見した近代の人文学との有益な親...
宗教にみられる真理観に代表されるように、真理はあらたにつ...
したがって人文学の使命は、ある形式の知識のなかに埋めこま...
近代人文学の共通の舞台が設けられたとき、インドや中国とい...
これは、研究は次から次へと新しい発見をすることにあると思...
***広大な認識空間の確立 [#sbd12abe]
ここで、西洋のサンスクリット語発見にはじまる人文学のグロ...
ヨーロッパ文化の基礎をギリシア時代にみとめたルネサンス期...
ルネサンスの学者たちの努力は一種、かれらの起源から失われ...
ヨーロッパの起源をインド・イラン語派の言語の古い形に求め...
**東洋の発見 [#gd49cb22]
***インド学と仏教研究 [#xc990417]
19世紀に、東洋で蓄積された伝統的な知識の山がヨーロッパ知...
インド学と仏教学という姉妹関係にある二つの学問は、西洋と...
19世紀ヨーロッパで宗教研究を生みだし言語学を促進したイン...
ここにもうひとつの思いもかけぬ幸運がやってきました。すな...
一方で、南アジア、東南アジア、チベット、東アジアという別...
***近代人文学における仏教聖典の出現 [#a9dd4ee8]
当然想像されるように、近代人文学による仏教のさまざまな系...
伝統的な仏教が本という媒体へと変容することは、近代人文学...
ある特定の認識の状態がたえず持続するには、技術と媒体が認...
パーリ文献協会は1881年にロンドンで設立され、そしてパーリ...
実に、完全な全集としての宗教教典の出版は、重要性において...
***東洋からの応答:大正新脩大蔵経 [#z0d95d46]
しかし実は、パーリ聖典のそれよりもはるかに数量が大きく、...
その目的のためには、木版の冊子本あるいは手写本の形で保存...
この責務を担って大正新脩大蔵経という名のもとに完成へとみ...
当時、この種の企業家的努力は今日におとらず厳しいものでし...
**デジタル化の重要性 [#ke8817fb]
***東洋の本の寿命 [#r924ab5d]
ここでやっと佳境にはいってきました。SATとよばれる日本のプ...
日本では、仏教の経典は19世紀末にいたるまで1400年以上にわ...
東アジアの他の国々については、それらは日本より遅れて新し...
***仏教の西洋との出会いと、人文情報学の可能性 [#g18a0626]
すでに述べたように、近代人文学の出現の主たる重要性は、な...
伝達された知識の保存、提示、交換といった人文学のほとんど...
***東洋における(仏教研究における)人文情報学の深刻な必要...
実は仏教学に関するかぎり、人文情報学はいまや疑いなく切実...
その結果、仏教の知識の内容はますます豊かに、複雑になって...
さらに、19世紀後半における近代人文学の導入以来、仏教研究...
これらすべては、仏教全体からの分枝ですから、仏教を理解す...
**人文情報学の使命 [#zc1227f9]
***境界線の消滅と自己同一性の変容 [#lfd9002d]
この講演の最後の話題として、人文学へのデジタル媒体の導入...
テクスト研究に関するかぎり、この主題は次の二つの特徴に絞...
第一に、テクストの境界線の消滅という点で、仏教経典特有の...
古代インドの仏教経典は、近代のテクストの概念にうまく分類...
題名によってテクストを同定することの困難は、著者性につい...
経典についての注釈書は著者の名をあかしますが、その多くは...
加えて、経典とその注釈書のあいだの境界線はしばしばごく曖...
したがって、題名、著者、ジャンル、範囲といった伝統的な範...
人文情報学は、全集のなかのテクストの境界を越え、それらを...
***人文学から独立したものとしてのデジタル次元の登場 [#j69...
自己同一性の変容の第二の特徴に移りましょう。この講演の最...
デジタル媒体の出現は、人文学から独立した、そして人文学に...
この変化によって人文学者たちにもたらされている厄介な問題...
自然科学の真理観は、自然科学者たちが17世紀前後から自然の...
しかし、文化の逐次的な伝達を実現するためには、自然言語と...
***人文情報学と人類の文化の自己同一性の変容 [#qa866ac5]
この問いに答えるために、ロミラ・ターパルによって提起され...
近代人文学が自らのきわめて重要だと思う研究の方法を人文情...
自然科学が人格的行為者を研究の領域から消滅させることにあ...
しかしデジタル次元の出現は、人文学の言語と自然科学のそれ...
終了行:
※以下の論考は、2012年7月16-22日にハンブルク大学にて開催さ...
*人文情報学を遠望する [#zde0359c]
(日本語訳:八尾 史 日本学術振興会特別研究員)
**序:多様性の相違 [#m2784517]
***プロローグ:人文情報学の多様性と変化 [#c3600e66]
この貴重な機会を与えられたことは、わたくしにとってまこと...
この会議の数々の注目すべき点のなかでわたくしがもっとも注...
そのうえ人文情報学が、自然科学者たちとのこれまでにない共...
***この講演の扱う範囲:人文学から人文情報学への円滑な連続...
この会議で幅広い話題が扱われているのとは反対に、わたくし...
わたくしがこの主題をとりあげる理由はごく単純です。ここに...
しかし、これら二つの学問のあいだには亀裂があり、それは人...
わたくしたち人文情報学者がかかえている問題はすべてさしせ...
***行為者志向の視点から行為志向の視点へ [#c2611ea8]
この問題についてのわたくしの結論は、くりかえしになります...
しかしこの見解には、一見してみえるよりももっと重要な意味...
>「文化は、どのようにして、そのうちのきわめて重要と思われ...
これは高名な歴史学者ロミラ・ターパルによって、歴史学者た...
一方の観点というのはできごとの起こる時代のスケールです。...
もう一方の観点は問いの意味論的構造のそれです。その問いに...
自己同一性の変容という話題は、行為者志向から行為志向への...
**人文情報学の求心的多様性 [#l45e0bce]
***人文学における二種の多様性:対象と方法 [#m98ff948]
では、人文情報学の遠望を得るための必須条件のひとつとして...
まず第一に、人文学は全体として多様な領域であり、学際的研...
はじめに人文学の多様性の性質に注意をはらいましょう。人文...
「研究の対象」にかかわる第一の種類の多様性は、人類の言語...
***方法の多様性:人文学における三つのアプローチ [#cb1ee080]
人文学はもうひとつの種類の多様性をもちます。これは人間の...
ひとつのアプローチは、記録された言説と外部の事件あるいは...
もうひとつのアプローチは、テクストの言語の外部にあるもの...
他のアプローチは、これら二つと比べて言語の機能から距離を...
これらの人文学の方法の相違は、存在、意識、言語という科学...
***さらなる拡散への統合の努力 [#jc4bcb54]
ここでわたくしたちは人文学の多様性のもうひとつの起源に注...
ある研究領域の多様性が飽和点に達すると、関連する領域に、...
しかしこの統合の努力は、時間がたつとともに、人文学の全体...
このように、歴史の流れのなかで人文学が展開するとは、概し...
***「忠実性」としての人文情報学の二種の多様性 [#o53d0f15]
その一方で、人文情報学の領域にみられる多様性ははなはだこ...
人文情報学がしていることは、原則的に、人文学によってもた...
***人文学の共有言語としての人文情報学 [#va9ae8c5]
第一の、人文学の多様性に由来する人文情報学の多様性をすこ...
人文情報学の使命のひとつはTEIの事業に代表されるように、人...
これは、古写本や本のなかに、暗示的なかたち、あるいは明示...
いるこれまでに発展した多様性を、デジタル媒体の領域に統合...
人文情報学のこの求心的傾向は、ことなる学問のあいだにメタ...
ある研究領域での言語共有の問題は、数字と記号によって研究...
***技術革新における人文情報学の多様性 [#daf3a850]
こんどは人文情報学の第二の多様性、つまり技術革新によって...
人文情報学はデジタル媒体という、人文学者たちにとってこれ...
しかしこの多様性は、自分たちの何者たるかが不変であると信...
実際のところは、これとまったく逆であると思います。人文情...
実に、技術のやむことのない変容のさなかにおける持続可能性...
**世界史における近代人文学 [#y7ad44a4]
***近代人文学の出現 [#gfa660c0]
それでは人文情報学の遠望の背景となる問題のなかの次の話題...
哲学史に代表される人文学の歴史はこれまで、おもに古代ギリ...
しかし、未来志向の性質に関して人文情報学の可能性を探求す...
ルネサンス時代のヨーロッパ人が自分たちの文化的起源を古代...
この古代言語の発見と東洋の認識とは、人文学の遠近法を地球...
***近代人文学とオリエンタリズム [#df2c2168]
東洋の人文学研究のグローバリゼーションが多かれ少なかれ東...
人文学のグローバリゼーションの意義は、歴史のはじまり以来...
東洋と西洋のあいだの出会いにおいて何がおこったかをできる...
***人文学の真理に対する態度 [#jcde9fdb]
そのようにすれば、東洋を発見した近代の人文学との有益な親...
宗教にみられる真理観に代表されるように、真理はあらたにつ...
したがって人文学の使命は、ある形式の知識のなかに埋めこま...
近代人文学の共通の舞台が設けられたとき、インドや中国とい...
これは、研究は次から次へと新しい発見をすることにあると思...
***広大な認識空間の確立 [#sbd12abe]
ここで、西洋のサンスクリット語発見にはじまる人文学のグロ...
ヨーロッパ文化の基礎をギリシア時代にみとめたルネサンス期...
ルネサンスの学者たちの努力は一種、かれらの起源から失われ...
ヨーロッパの起源をインド・イラン語派の言語の古い形に求め...
**東洋の発見 [#gd49cb22]
***インド学と仏教研究 [#xc990417]
19世紀に、東洋で蓄積された伝統的な知識の山がヨーロッパ知...
インド学と仏教学という姉妹関係にある二つの学問は、西洋と...
19世紀ヨーロッパで宗教研究を生みだし言語学を促進したイン...
ここにもうひとつの思いもかけぬ幸運がやってきました。すな...
一方で、南アジア、東南アジア、チベット、東アジアという別...
***近代人文学における仏教聖典の出現 [#a9dd4ee8]
当然想像されるように、近代人文学による仏教のさまざまな系...
伝統的な仏教が本という媒体へと変容することは、近代人文学...
ある特定の認識の状態がたえず持続するには、技術と媒体が認...
パーリ文献協会は1881年にロンドンで設立され、そしてパーリ...
実に、完全な全集としての宗教教典の出版は、重要性において...
***東洋からの応答:大正新脩大蔵経 [#z0d95d46]
しかし実は、パーリ聖典のそれよりもはるかに数量が大きく、...
その目的のためには、木版の冊子本あるいは手写本の形で保存...
この責務を担って大正新脩大蔵経という名のもとに完成へとみ...
当時、この種の企業家的努力は今日におとらず厳しいものでし...
**デジタル化の重要性 [#ke8817fb]
***東洋の本の寿命 [#r924ab5d]
ここでやっと佳境にはいってきました。SATとよばれる日本のプ...
日本では、仏教の経典は19世紀末にいたるまで1400年以上にわ...
東アジアの他の国々については、それらは日本より遅れて新し...
***仏教の西洋との出会いと、人文情報学の可能性 [#g18a0626]
すでに述べたように、近代人文学の出現の主たる重要性は、な...
伝達された知識の保存、提示、交換といった人文学のほとんど...
***東洋における(仏教研究における)人文情報学の深刻な必要...
実は仏教学に関するかぎり、人文情報学はいまや疑いなく切実...
その結果、仏教の知識の内容はますます豊かに、複雑になって...
さらに、19世紀後半における近代人文学の導入以来、仏教研究...
これらすべては、仏教全体からの分枝ですから、仏教を理解す...
**人文情報学の使命 [#zc1227f9]
***境界線の消滅と自己同一性の変容 [#lfd9002d]
この講演の最後の話題として、人文学へのデジタル媒体の導入...
テクスト研究に関するかぎり、この主題は次の二つの特徴に絞...
第一に、テクストの境界線の消滅という点で、仏教経典特有の...
古代インドの仏教経典は、近代のテクストの概念にうまく分類...
題名によってテクストを同定することの困難は、著者性につい...
経典についての注釈書は著者の名をあかしますが、その多くは...
加えて、経典とその注釈書のあいだの境界線はしばしばごく曖...
したがって、題名、著者、ジャンル、範囲といった伝統的な範...
人文情報学は、全集のなかのテクストの境界を越え、それらを...
***人文学から独立したものとしてのデジタル次元の登場 [#j69...
自己同一性の変容の第二の特徴に移りましょう。この講演の最...
デジタル媒体の出現は、人文学から独立した、そして人文学に...
この変化によって人文学者たちにもたらされている厄介な問題...
自然科学の真理観は、自然科学者たちが17世紀前後から自然の...
しかし、文化の逐次的な伝達を実現するためには、自然言語と...
***人文情報学と人類の文化の自己同一性の変容 [#qa866ac5]
この問いに答えるために、ロミラ・ターパルによって提起され...
近代人文学が自らのきわめて重要だと思う研究の方法を人文情...
自然科学が人格的行為者を研究の領域から消滅させることにあ...
しかしデジタル次元の出現は、人文学の言語と自然科学のそれ...
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