INBUDS
正法眼藏 (No. 2582_ 道元撰 ) in Vol. 82
![[First]](first.gif)
![[Prev+100]](10first.gif)
![[Prev]](prev.gif)
267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 ![[Next]](next.gif)
![[Next+100]](10next.gif)
![[Last]](last.gif)
[行番号:無/有] [返り点:有/無] [CITE]
レ下ス
ヲ二箇ノ注脚ヲ一。差フレ之ニ毫釐ナレハ。失スルレ之ヲ千里。
會ヤ也打テレ草ヲ驚シレ蛇ヲ。不會ヤ也燒キレ錢ヲ引クレ鬼ヲ。
荒田不レ揀ハ老倶胝。只今ノ信セテレ手拈シ來ル底
先師古佛上堂ノトキ。ヨノツネニイハ
ク。宏智古佛。シカアルヲ宏智古佛ヲ古佛
ト相見セル。ヒトリ先師古佛ノミナリ。宏
智ノトキ。徑山ノ大慧禪師宗杲トイフア
リ。南嶽ノ遠孫ナルヘシ。大宋一國ノ天下
オモハク。大慧ハ。宏智ニヒトシカルヘシ。
アマリサヘ宏智ヨリモ。ソノ人ナリトオ
モヘリ。コノアヤマリハ大宋國内ノ道俗。
トモニ疎學ニシテ。道眼イマタアキラカ
ナラス。知人ノアキラメナシ。知己ノチカ
ラナキニヨリテナリ。宏智ノアクルト
コロ。眞箇ノ立志アリ。趙州古佛。曲躬叉
手ノ道理ヲ參學スヘシ。正當恁麼時。コレ
王索仙陀婆ナリヤイナヤ。臣奉仙陀婆ナ
リヤイナヤ。雪竇ノ索鹽奉馬ノ宗旨ヲ參
學スヘシ。イハユル索鹽奉馬。トモニ王索
仙陀婆＊ナリ。臣索仙陀婆ナリ。世尊索仙
陀婆。迦葉破顏微笑ナリ。初祖索仙陀婆。四
子馬鹽水器ヲ奉ス。馬鹽水器ノ。スナハチ
索仙陀婆ナルトキ。奉馬奉水スル關棙子。
學スヘシ
南泉一日見テ二鄧隱峯ノ來ルヲ一。遂ニ指シテ二淨
ヲ一云ク。
淨ハ即チ境。中ニ有リレ水。不レ得レ動二著スルヲ境ヲ一。
與メニ二老僧カ一將チレ水ヲ來レ。峯遂ニ將テ二水ヲ一向テ二南
泉ノ面前ニ一瀉ク。泉即チ休ス ステニコレ南泉索
水。徹底海枯。隱峯奉器。缺漏傾湫。シカモ
カクノコトクナリトイヘトモ。境中有水。
水中有境ヲ參學スヘシ。動水也未。動境也
未
香嚴襲燈大師。因ニ僧問フ。如何ンカ是レ王索仙陀
婆
置殺ス人ヲ一 シハラクトフ。香嚴道底ノ過
＊這邊來コレ索＊仙陀婆ナリヤ。奉＊仙陀婆
ナリヤ。試請道看。チナミニ僧過＊這邊去
セル。香嚴ノ索底ナリヤ。香嚴ノ奉底ナリ
ヤ。香嚴ノ本期ナリヤ。モシ本期ニアラス
ハ。鈍置殺人トイフヘカラス。モシ本期
ナラハ。鈍置殺人ナルヘカラス。香嚴一期
ノ盡力道底＊ナリトイヘトモ。イマタ喪
身失命ヲマヌカレス。タトヘハコレ敗軍
之將。サラニ武勇ヲカタル。オホヨソ説
黄道黒。頂
眼睛。オノレツカラ仙陀婆ノ
索奉。審審細細ナリ。拈拄杖。擧拂子。タレ
カシラサラント＊イヒヌヘシ。シカアレト
モ膠柱調絃スルトモカラノ。分上ニアラ
ス。コノトモカラ膠柱調絃ヲシラサルカ
ユヱニ。分上ニアラサル＊ナリ
世尊一日陞座。文殊白椎
曰ク。諦觀法王法。
法王法如是。世尊下座。雪竇山明覺禪師重
顯云ク。列聖叢中ノ作者知ル。法王ノ法令不ルヲ
レ如キノニレ斯ノ。衆中若シ有ラハ二仙陀ノ客一。何ソ必シモ文殊
下サン二一椎ヲ一 シカアレハ雪竇道ハ。一＊椎
モシ渾身無孔ナランカコトクハ。下了未
下。トモニ脱落無孔ナラン。モシカクノ
コトクナランハ。一＊椎スナハチ仙陀婆
＊ナリ。ステニ恁麼人ナラン。コレ列聖一
叢仙陀客＊ナリ。コノユヱニ法王法如是ナ
リ。使得十二時。コレ索仙陀婆ナリ。被十
二時使。コレ索仙陀婆＊ナリ。索拳頭奉拳
頭スヘシ。索拂子奉拂子スヘシ。シカアレ
トモイマ大宋國ノ諸山ニアル長老ト稱ス
ルトモカラ。仙陀婆スヘテ夢也未見在＊ナ
リ。苦哉苦哉。祖道陵夷ナリ。苦學オコタ
ラサレ。佛祖ノ命脈。マサニ嗣續スヘシ。タ
トヘハ如何是佛トイフカコトキ。即心是
佛ト道取スル。ソノ宗旨イカン。コレ仙陀
婆ニアラサランヤ。即心是佛トイフハ。タ
レトイフソト審細ニ參究スヘシ。タレカ
シラン仙陀婆ノ築著磕著ナルコトヲ
正法眼藏王索仙陀婆
爾ノ時寛元三年。十月二十三日。在リテ二越州
大佛寺ニ一示スレ衆
正法眼藏示庫院文
寛元四年。八月六日。示レ衆ニ云ク。齋僧ノ之法ハ。
以テレ敬ヲ爲スレ宗。ハルカニ西天竺ノ法ヲ正傳
シ。チカクハ震旦國ノ法ヲ正傳スルニ。如
來滅度ノノチ。アルヒハ諸天ノ天供ヲ。佛
ナラヒニ僧ニ奉獻シ。アルヒハ國王ノ王膳
ヲ。佛ナラヒニ僧ニ供養シタテマツリキ。
ソノホカ長者居士ノイヘヨリタテマツ
リ。毘闍首陀ノイヘヨリタテマツルモアリ
キ。カクノコトクノ供養。トモニ敬重スル
トコロ。ネンコロナリ。ヨク天上人間ノナ
カニ。極重ノ敬禮ヲモチヰ。至極ノ尊言ヲ
シテ。ウヤマヒタテマツリテ。飯饌等ノ供
養ノソナヘヲ造作スルナリ。深意アリ。イ
マ遠方ノ深山ナリトモ。寺院ノ香積局。ソ
ノ禮儀言語。シタシク正傳スヘキナリ。コ
レ天上人間ノ佛法ヲ習學スルナリ。イハ
ユル粥ヲハ。御粥トマヲスヘシ。朝粥トモ
マヲスヘシ。粥トマヲスヘカラス。齋ヲハ。
御齋トマヲスヘシ。齋時トモマヲスヘシ。
齋トマヲスヘカラス。ヨネシロメマヰラ
セヨトマヲスヘシ。ヨネツケトイフヘカ
ラス。ヨネアラヒマヰラスルヲハ。淨米シ
マヰラセヨトマヲスヘシ。ヨネカセトマ
ヲスヘカラス。御菜ノ御料ノナニモノ。エ
リマヰラセヨトマヲスヘシ。菜＊エレトマ
ヲスヘカラス。御汁ノモノ。シ。マヰラセヨ
トマヲスヘシ。汁ニヨト。マヲスヘカラス。
御羹シ。マヰラセヨトマヲスヘシ。羹セヨ
トマヲスヘカラス。御齋。御粥ハ。ムマセサ
セタマヒタルトマヲスヘシ。齋粥イレタ
テマツラン調度。ミナカクノコトクウヤ
マフヘシ。不レレ敬スバ。カヘリテ殃過ヲマネク。
功徳ヲウルコトナキナリ。齋粥ヲトトノ
ヘマヰラスルトキ。人ノ息ニテ米菜。オヨ
ヒ。イツレノモノヲモ。フクヘカラス。タト
ヒカハキタルモノナリトモ。綴袖ニ觸ス
ルコトナカレ。頭顏ニ觸タル手ヲ。イマタ
アラハズシテ。齋粥ノ器。オヨヒ齋粥ニ手
フルルコトナカレ。ヨネヲ＊エリマヰラス
ルヨリ。乃至飯羹ニツクリマヰラスル經
營ノアヒタ。身ノカユキトコロ。カキテハ。
カナラスソノ手ヲアラフヘシ。齋粥卜ト
ノヘマヰラスルトコロニテハ。佛經ノ文。
オヨヒ祖師ノ語ヲ諷誦スヘシ。世間ノ語。
雜穢ノ話。イフヘカラス。オホヨソ米菜鹽
醤等ノ。イロイロノモノ。マシマストマヲ
スヘシ。米アリ菜アリトマヲスヘカラス。
齋粥ノアラントコロヲスキンニハ。僧行
者ハ。問訊シタテマツルヘシ。零菜零米等
アリトモ。齋粥ノノチ使用スヘシ。齋粥ヲ
ハラサランホト。ヲカスヘカラス。齋粥ト
トノヘマヰラスル調度。ネンコロニ護惜
スヘシ。他事ニモチヰヘカラス。在家ヨ
リ。キタレラントモカラノ。イマタ手ヲキ
ヨメサランニハ。手ヲフレサスヘカラス。
在家ヨリキタレラン菜果等。イマタキヨ
メスハ。洒水シテ行香シ。行火シテノチニ。
三寶衆僧ニタテマツルヘシ。現在大宋國
ノ諸山諸寺ニハ。モシ在家ヨリ饅頭。乳餅。
蒸餅等。キタランハ。カサネテムシマヰラ
セテ。衆僧ニタテマツル。コレキヨムルナ
リ。イマタムササレハ。タテマツラサルナ
リ。コレオホカルナカニ。スコシハカリナ
リ。コノ大旨ヲエテ。庫院香積。コレヲ行
スヘシ。萬事非儀ナルコトナカレ
右條條。佛祖ノ之命脈。衲僧之眼睛ナリ也。外道
未タレ知ラ。天魔不レ堪エ。唯タ有テ二佛子ノミ一。乃チ能ク傳フ
レ之ヲ。庫院ノ之知事。明察莫レレ失スル焉
開闢沙門道元示
永平寺
今告ク二知事一。自リレ今已後。若シ過午ノ後チ。檀那ヨリノ
供スルノ飯ハ。留メテ待タシメヨ二翌日ヲ一。如キハ二其麪餅果子。諸
般ノ粥等ノ一。雖
レ晩ト猶ホ行セヨ。乃チ佛祖會下ノ藥石ナリ
也。況ヤ大宋國内。有道ノ之勝躅ナリ也
如來曾テ許ス二雪山ノ僧裹服衣ヲ一。當山モ亦タ許ス二雪
時ノ之藥石ヲ一矣
開闢永平寺希玄印
正法眼藏出家
禪苑清規ニ云ク。三世ノ諸佛。皆ナ曰出家成道シ。西
天二十八祖。唐土六祖。傳フルモノ二佛心印ヲ一。盡ク
是レ沙門
。蓋シ以レ嚴
淨スル毘尼ヲ一。方能洪二範タリ三
界ニ一。然アレハ則チ參禪問道ハ。戒律ヲ爲スレ先ト。既ニ非ンハ二
離レレ過ヲ防カ
非ヲ。何ヲ以カ成佛作祖セン。受戒ノ之法ハ。
應ニレ備フ二三衣ト鉢ト具ト竝ニ新淨ノ衣物ヲ一。如無ンハ二新
衣一。浣染令メヨレ淨カラ。入壇受戒ニハ不レレ得レ借二
借スルヲ衣鉢ヲ一。一心專注。愼ンテ勿レ二異縁スル一。像リ二
佛ノ形儀ニ一。具シ二佛ノ戒律ヲ一。得ウ二佛ノ受用ヲ一。此レ非ス二小
事ニ一。豈ニ可ケンヤ二輕心ス一。若シ借二借セハ衣鉢ヲ一。雖二登壇
受戒スト一。竝ニ不レ得レ戒ヲ。若シ不ンハ二増受セ一。一生爲リ二
無戒之人ト一。濫リニ厠リ二空門ニ一虚ク受ケン二信施ヲ一。初
心ノ入道ハ。法律未タレ諳セ。師匠不ンハレ言ハ。陷レノ二人ヲ
於此ニ一。今マ茲ニ苦口ス。敢テ望ラクハ銘センヲレ心ニ。既ニ受ケテハ二
聲聞戒ヲ一。應ニレ受ク二菩薩戒ヲ一。此レ入ルノレ法ニ之漸也
アキラカニシルヘシ諸佛諸祖ノ成道。
夕タコレ出家受戒ノミナリ。諸佛諸祖
ノ命脈タタコレ出家受戒ノミ＊ナリ。イマ
タカツテ出家セサルモノハ。ナラヒニ佛
祖ニアラサルナリ。佛ヲミ祖ヲミルトハ。
出家受戒スルナリ
摩訶迦葉。隨二順世尊ニ一。志二求シ出家ヲ一。冀フ
レ度センヲ二諸有ヲ一。佛言玉ヘハ二善來比丘ト一。鬚髮自落チ。
袈裟著ケリレ體ニ ホトケヲ學シテ諸有ヲ解脱
スルトキ。ミナ出家受戒スル勝躅。カクノ
コトシ
大般若經第三ニ曰。佛世尊言ハク。若シ菩薩摩訶
薩。作サン二是ノ思惟ヲ一。我レ於テカ二何レノ時ニ一。當捨テテ二國位ヲ一。
出家ノ之日。即チ成セン二無上正等菩提ヲ一。還タ於テ二是ノ
日ニ一。轉二妙法輪ヲ一。即チ令メン三無量無數有情ヲ。遠
塵離垢シ。生セ二淨法眼ヲ一。復タ令メン下無量無數有
情ヲ。永ク盡シ二諸漏ヲ一。心慧解脱セ上。亦令メン丙無量無
數ノ有情ヲ。皆ナ於テ二無上正等菩提ニ一得セ乙不退
轉ヲ甲。是ノ菩薩摩訶薩。欲セハレ成セント二斯ノ事ヲ一。應ニレ學ス二
般若波羅蜜ヲ一 オホヨソ無上菩提ハ。出家
受戒ノトキ滿足スルナリ。出家ノ日ニア
ラサレハ成滿セス。シカアレハスナハチ
出家之日ヲ拈來シテ。成無上菩提ノ日ヲ
現成セリ。成無上菩提ノ日ヲ拈出スル。出
家ノ日＊ナリ。コノ出家ノ翻筋斗スル。轉妙
法輪＊ナリ。コノ出家。スナハチ無數有情
ヲシテ。無上菩提ヲ不退轉ナラシムルナ
リ。シルヘシ自利利他。ココニ滿足シテ。阿
耨菩提。不退不轉ナルハ。出家受戒＊ナリ。
成無上菩提。カヘリテ出家ノ日ヲ成菩提
スルナリ。マサニシルヘシ出家ノ日ハ。一
異ヲ超越セル＊ナリ。出家ノ日ノウチニ。三
阿僧祇劫ヲ修證スルナリ。出家ノ日ノウ
チニ。往無邊劫海。轉妙法輪スル＊ナリ。出
家ノ日ハ。謂如食頃ニアラス。六十小劫ニ
アラス。三際ヲ超越セリ。頂ヲ脱落セリ。
出家ノ日ハ。出家ノ日ヲ超越セル＊ナリ。シ
カモカクノコトクナリトイヘトモ。羅
籠打破スレハ。出家ノ日。＊スナハチ出家ノ
日ナリ。成道ノ日。＊スナハチ成道ノ日ナ
リ
大論第十三ニ曰ク。佛在ス二祇桓ニ一。有リ二醉婆羅門一。
來二至シ佛所ニ一。欲スレ作ラント二比丘ト一。佛勅二諸ノ比丘ニ一。
與剃頭シ著セシム二袈裟ヲ一。酒醒テ驚怪シ。見テ三身ノ變異。
忽チ爲ルヲ二比丘ト一。即チ便チ走リ去ル。諸ノ比丘問タテマツルレ佛ニ。
何ヲ以テ聽二醉婆羅門ヲ一。而作シ玉フヤ二比丘ト一。而モ今マ
歸リ去レリ。佛言ハク。此ノ婆羅門。無量劫中。無シ二出
家ノ心一。今因テ二醉後ニ一。暫ク發ス二微心ヲ一。爲二此ノ縁ノ一
故ニ。後ニ出家セント。如キレ是種種因縁ヲモテ出家ノ破
戒。猶ホ勝レリ二在家ノ持戒ニ一。以テナリ二在家ノ戒ハ一。不ルヲレ爲二
解脱スル一 佛勅ノ宗旨。アキラカニシリヌ。
佛化ハ。タタ出家ソレ根本＊ナリ。イマタ出
家セサルハ。佛法ニアラス。如來在世。モ
ロモロノ外道。ステニミツカラカ邪道ヲ
ステテ。佛法ニ歸依スルトキ。カナラスマ
ツ出家ヲコフシナリ。世尊アルヒハミツ
カラ善來比丘トサツケマシマス。アルヒ
ハ諸比丘ニ勅シテ。剃頭鬚髮。出家受戒
セシメマシマスニ。トモニ出家受戒ノ法。
夕チマチニ具足セシナリ。シルヘシ佛化
ステニ身心ニカウフラシムルトキ。頭髮
自落シ。袈裟覆體スルナリ。モシ諸佛イマ
タ聽許シマシマササルニハ＊鬚髮剃除セ
ラレス。袈裟覆體セラレス。佛戒受得セラ
レサルナリ。シカアレハスナハチ出家受
戒ハ。諸佛如來ノ親受記ナリ
釋迦牟尼佛言ハク。諸ノ善男子。如來見テハ下諸ノ衆
生ノ。樂ヘル二於小法ヲ一。徳薄ク垢重キ者ヲ上。爲ニ二是ノ人ノ一
説ク三我レ少出家シ。得タリト二阿耨多羅三藐三菩提ヲ一。
然レトモ我レ實ニ成佛ヨリ已來タ。久遠ナル若シレ斯ノ。但タ以テ二
方便ヲ一。教二化衆生ヲ一。令ントレ入ラ二佛道ニ一。作ス二如キレ是ノ
説ヲ一 シカアレハ久遠實成ハ。我少出家ナ
リ。得阿耨多羅三藐三菩提ハ。我少出家
＊ナリ。我少出家ヲ擧拈スルニ。徳薄垢重
ノ樂小法スル衆生。ナラヒニ我少出家ス
ル＊ナリ。我少出家ノ説法ヲ見聞參學ス
ルトコロニ。見佛阿耨多羅三藐三菩提
ナリ。樂小法ノ衆生ヲ救度スルトキ。爲
是人説我少出家。得阿耨多羅三藐三菩提
ナリ。シカモカクノコトクナリトイフ
トモ。畢竟シテトフヘシ。出家功徳。ソレイ
クラハカリナルヘキソ。カレニムカフテ
イフヘシ頂許ナリ
正法眼藏出家
爾ノ時寛元四年。丙午九月十五日。在リテ二越
宇永平寺ニ一示スレ衆
會ヤ也打テレ草ヲ驚シレ蛇ヲ。不會ヤ也燒キレ錢ヲ引クレ鬼ヲ。
荒田不レ揀ハ老倶胝。只今ノ信セテレ手拈シ來ル底
先師古佛上堂ノトキ。ヨノツネニイハ
ク。宏智古佛。シカアルヲ宏智古佛ヲ古佛
ト相見セル。ヒトリ先師古佛ノミナリ。宏
智ノトキ。徑山ノ大慧禪師宗杲トイフア
リ。南嶽ノ遠孫ナルヘシ。大宋一國ノ天下
オモハク。大慧ハ。宏智ニヒトシカルヘシ。
アマリサヘ宏智ヨリモ。ソノ人ナリトオ
モヘリ。コノアヤマリハ大宋國内ノ道俗。
トモニ疎學ニシテ。道眼イマタアキラカ
ナラス。知人ノアキラメナシ。知己ノチカ
ラナキニヨリテナリ。宏智ノアクルト
コロ。眞箇ノ立志アリ。趙州古佛。曲躬叉
手ノ道理ヲ參學スヘシ。正當恁麼時。コレ
王索仙陀婆ナリヤイナヤ。臣奉仙陀婆ナ
リヤイナヤ。雪竇ノ索鹽奉馬ノ宗旨ヲ參
學スヘシ。イハユル索鹽奉馬。トモニ王索
仙陀婆＊ナリ。臣索仙陀婆ナリ。世尊索仙
陀婆。迦葉破顏微笑ナリ。初祖索仙陀婆。四
子馬鹽水器ヲ奉ス。馬鹽水器ノ。スナハチ
索仙陀婆ナルトキ。奉馬奉水スル關棙子。
學スヘシ
南泉一日見テ二鄧隱峯ノ來ルヲ一。遂ニ指シテ二淨
淨
與メニ二老僧カ一將チレ水ヲ來レ。峯遂ニ將テ二
泉ノ面前ニ一瀉ク。泉即チ休ス ステニコレ南泉索
水。徹底海枯。隱峯奉器。缺漏傾湫。シカモ
カクノコトクナリトイヘトモ。境中有水。
水中有境ヲ參學スヘシ。動水也未。動境也
未
香嚴襲燈大師。因ニ僧問フ。如何ンカ是レ王索仙陀
婆
置殺ス人ヲ一 シハラクトフ。香嚴道底ノ過
＊這邊來コレ索＊仙陀婆ナリヤ。奉＊仙陀婆
ナリヤ。試請道看。チナミニ僧過＊這邊去
セル。香嚴ノ索底ナリヤ。香嚴ノ奉底ナリ
ヤ。香嚴ノ本期ナリヤ。モシ本期ニアラス
ハ。鈍置殺人トイフヘカラス。モシ本期
ナラハ。鈍置殺人ナルヘカラス。香嚴一期
ノ盡力道底＊ナリトイヘトモ。イマタ喪
身失命ヲマヌカレス。タトヘハコレ敗軍
之將。サラニ武勇ヲカタル。オホヨソ説
黄道黒。頂
索奉。審審細細ナリ。拈拄杖。擧拂子。タレ
カシラサラント＊イヒヌヘシ。シカアレト
モ膠柱調絃スルトモカラノ。分上ニアラ
ス。コノトモカラ膠柱調絃ヲシラサルカ
ユヱニ。分上ニアラサル＊ナリ
世尊一日陞座。文殊白椎
法王法如是。世尊下座。雪竇山明覺禪師重
顯云ク。列聖叢中ノ作者知ル。法王ノ法令不ル
レ如キノ
下サン二一椎ヲ一 シカアレハ雪竇道ハ。一＊椎
モシ渾身無孔ナランカコトクハ。下了未
下。トモニ脱落無孔ナラン。モシカクノ
コトクナランハ。一＊椎スナハチ仙陀婆
＊ナリ。ステニ恁麼人ナラン。コレ列聖一
叢仙陀客＊ナリ。コノユヱニ法王法如是ナ
リ。使得十二時。コレ索仙陀婆ナリ。被十
二時使。コレ索仙陀婆＊ナリ。索拳頭奉拳
頭スヘシ。索拂子奉拂子スヘシ。シカアレ
トモイマ大宋國ノ諸山ニアル長老ト稱ス
ルトモカラ。仙陀婆スヘテ夢也未見在＊ナ
リ。苦哉苦哉。祖道陵夷ナリ。苦學オコタ
ラサレ。佛祖ノ命脈。マサニ嗣續スヘシ。タ
トヘハ如何是佛トイフカコトキ。即心是
佛ト道取スル。ソノ宗旨イカン。コレ仙陀
婆ニアラサランヤ。即心是佛トイフハ。タ
レトイフソト審細ニ參究スヘシ。タレカ
シラン仙陀婆ノ築著磕著ナルコトヲ
正法眼藏王索仙陀婆
爾ノ時寛元三年。十月二十三日。在リテ二越州
大佛寺ニ一示スレ衆
寛元四年。八月六日。示
以テレ敬ヲ爲スレ宗。ハルカニ西天竺ノ法ヲ正傳
シ。チカクハ震旦國ノ法ヲ正傳スルニ。如
來滅度ノノチ。アルヒハ諸天ノ天供ヲ。佛
ナラヒニ僧ニ奉獻シ。アルヒハ國王ノ王膳
ヲ。佛ナラヒニ僧ニ供養シタテマツリキ。
ソノホカ長者居士ノイヘヨリタテマツ
リ。毘闍首陀ノイヘヨリタテマツルモアリ
キ。カクノコトクノ供養。トモニ敬重スル
トコロ。ネンコロナリ。ヨク天上人間ノナ
カニ。極重ノ敬禮ヲモチヰ。至極ノ尊言ヲ
シテ。ウヤマヒタテマツリテ。飯饌等ノ供
養ノソナヘヲ造作スルナリ。深意アリ。イ
マ遠方ノ深山ナリトモ。寺院ノ香積局。ソ
ノ禮儀言語。シタシク正傳スヘキナリ。コ
レ天上人間ノ佛法ヲ習學スルナリ。イハ
ユル粥ヲハ。御粥トマヲスヘシ。朝粥トモ
マヲスヘシ。粥トマヲスヘカラス。齋ヲハ。
御齋トマヲスヘシ。齋時トモマヲスヘシ。
齋トマヲスヘカラス。ヨネシロメマヰラ
セヨトマヲスヘシ。ヨネツケトイフヘカ
ラス。ヨネアラヒマヰラスルヲハ。淨米シ
マヰラセヨトマヲスヘシ。ヨネカセトマ
ヲスヘカラス。御菜ノ御料ノナニモノ。エ
リマヰラセヨトマヲスヘシ。菜＊エレトマ
ヲスヘカラス。御汁ノモノ。シ。マヰラセヨ
トマヲスヘシ。汁ニヨト。マヲスヘカラス。
御羹シ。マヰラセヨトマヲスヘシ。羹セヨ
トマヲスヘカラス。御齋。御粥ハ。ムマセサ
セタマヒタルトマヲスヘシ。齋粥イレタ
テマツラン調度。ミナカクノコトクウヤ
マフヘシ。不レレ敬スバ。カヘリテ殃過ヲマネク。
功徳ヲウルコトナキナリ。齋粥ヲトトノ
ヘマヰラスルトキ。人ノ息ニテ米菜。オヨ
ヒ。イツレノモノヲモ。フクヘカラス。タト
ヒカハキタルモノナリトモ。綴袖ニ觸ス
ルコトナカレ。頭顏ニ觸タル手ヲ。イマタ
アラハズシテ。齋粥ノ器。オヨヒ齋粥ニ手
フルルコトナカレ。ヨネヲ＊エリマヰラス
ルヨリ。乃至飯羹ニツクリマヰラスル經
營ノアヒタ。身ノカユキトコロ。カキテハ。
カナラスソノ手ヲアラフヘシ。齋粥卜ト
ノヘマヰラスルトコロニテハ。佛經ノ文。
オヨヒ祖師ノ語ヲ諷誦スヘシ。世間ノ語。
雜穢ノ話。イフヘカラス。オホヨソ米菜鹽
醤等ノ。イロイロノモノ。マシマストマヲ
スヘシ。米アリ菜アリトマヲスヘカラス。
齋粥ノアラントコロヲスキンニハ。僧行
者ハ。問訊シタテマツルヘシ。零菜零米等
アリトモ。齋粥ノノチ使用スヘシ。齋粥ヲ
ハラサランホト。ヲカスヘカラス。齋粥ト
トノヘマヰラスル調度。ネンコロニ護惜
スヘシ。他事ニモチヰヘカラス。在家ヨ
リ。キタレラントモカラノ。イマタ手ヲキ
ヨメサランニハ。手ヲフレサスヘカラス。
在家ヨリキタレラン菜果等。イマタキヨ
メスハ。洒水シテ行香シ。行火シテノチニ。
三寶衆僧ニタテマツルヘシ。現在大宋國
ノ諸山諸寺ニハ。モシ在家ヨリ饅頭。乳餅。
蒸餅等。キタランハ。カサネテムシマヰラ
セテ。衆僧ニタテマツル。コレキヨムルナ
リ。イマタムササレハ。タテマツラサルナ
リ。コレオホカルナカニ。スコシハカリナ
リ。コノ大旨ヲエテ。庫院香積。コレヲ行
スヘシ。萬事非儀ナルコトナカレ
右條條。佛祖ノ之命脈。衲僧之眼睛ナリ也。外道
未タレ知ラ。天魔不レ堪エ。唯タ有テ二佛子ノミ一。乃チ能ク傳フ
レ之ヲ。庫院ノ之知事。明察
開闢沙門道元示
永平寺
今告ク二知事一。自リレ今已後。若シ過午ノ後チ。檀那ヨリノ
供スルノ飯ハ。留メテ待タシメヨ二翌日ヲ一。如キハ二其麪餅果子。諸
般ノ粥等ノ一。雖
也。況ヤ大宋國内。有道ノ之勝躅ナリ也
如來曾テ許ス二雪山ノ僧裹服衣ヲ一。當山モ亦タ許ス二雪
時ノ之藥石ヲ一矣
開闢永平寺希玄印
禪苑清規ニ云ク。三世ノ諸佛。皆ナ曰出家成道シ。西
天二十八祖。唐土六祖。傳フルモノ二佛心印ヲ一。盡ク
是レ沙門
淨スル毘尼ヲ一。方能洪二範タリ三界ニ一。然アレハ則チ參禪問道ハ。戒律ヲ爲スレ先ト。既ニ非ンハ二
離レレ過ヲ防カ
非ヲ。何ヲ以カ成佛作祖セン。受戒ノ之法ハ。應ニレ備フ二三衣ト鉢ト具ト竝ニ新淨ノ衣物ヲ一。如無ンハ二新
衣一。浣染
借スル
佛ノ形儀ニ一。具シ二佛ノ戒律ヲ一。得ウ二佛ノ受用ヲ一。此レ非ス二小
事ニ一。豈ニ可ケンヤ二輕心ス一。若シ借二借セハ衣鉢ヲ一。雖
受戒スト一。竝ニ不レ得レ戒ヲ。若シ不ンハ二増受セ一。一生爲リ二
無戒之人ト一。濫リニ厠リ二空門ニ一虚ク受ケン二信施ヲ一。初
心ノ入道ハ。法律未タレ諳セ。師匠不ンハレ言ハ。陷レノ二人ヲ
於此ニ一。今マ茲ニ苦口ス。敢テ望ラクハ銘セン
聲聞戒ヲ一。應ニレ受ク二菩薩戒ヲ一。此レ入ルノレ法ニ之漸也
アキラカニシルヘシ諸佛諸祖ノ成道。
夕タコレ出家受戒ノミナリ。諸佛諸祖
ノ命脈タタコレ出家受戒ノミ＊ナリ。イマ
タカツテ出家セサルモノハ。ナラヒニ佛
祖ニアラサルナリ。佛ヲミ祖ヲミルトハ。
出家受戒スルナリ
摩訶迦葉。隨二順
レ度セン
袈裟著ケリレ體ニ ホトケヲ學シテ諸有ヲ解脱
スルトキ。ミナ出家受戒スル勝躅。カクノ
コトシ
大般若經第三ニ曰。佛世尊言ハク。若シ菩薩摩訶
薩。作サン二是ノ思惟ヲ一。我レ於テカ二何レノ時ニ一。當捨テテ二國位ヲ一。
出家ノ之日。即チ成セン二無上正等菩提ヲ一。還タ於テ二是ノ
日ニ一。轉
塵離垢シ。生セ二淨法眼ヲ一。復タ令メン下無量無數有
情ヲ
數ノ有情ヲ
轉ヲ甲。是ノ菩薩摩訶薩。欲セハレ成セント二斯ノ事ヲ一。應ニレ學ス二
般若波羅蜜ヲ一 オホヨソ無上菩提ハ。出家
受戒ノトキ滿足スルナリ。出家ノ日ニア
ラサレハ成滿セス。シカアレハスナハチ
出家之日ヲ拈來シテ。成無上菩提ノ日ヲ
現成セリ。成無上菩提ノ日ヲ拈出スル。出
家ノ日＊ナリ。コノ出家ノ翻筋斗スル。轉妙
法輪＊ナリ。コノ出家。スナハチ無數有情
ヲシテ。無上菩提ヲ不退轉ナラシムルナ
リ。シルヘシ自利利他。ココニ滿足シテ。阿
耨菩提。不退不轉ナルハ。出家受戒＊ナリ。
成無上菩提。カヘリテ出家ノ日ヲ成菩提
スルナリ。マサニシルヘシ出家ノ日ハ。一
異ヲ超越セル＊ナリ。出家ノ日ノウチニ。三
阿僧祇劫ヲ修證スルナリ。出家ノ日ノウ
チニ。往無邊劫海。轉妙法輪スル＊ナリ。出
家ノ日ハ。謂如食頃ニアラス。六十小劫ニ
アラス。三際ヲ超越セリ。頂
出家ノ日ハ。出家ノ日ヲ超越セル＊ナリ。シ
カモカクノコトクナリトイヘトモ。羅
籠打破スレハ。出家ノ日。＊スナハチ出家ノ
日ナリ。成道ノ日。＊スナハチ成道ノ日ナ
リ
大論第十三ニ曰ク。佛在ス二祇桓ニ一。有リ二醉婆羅門一。
來二至シ佛所ニ一。欲スレ作ラント二比丘ト一。佛勅
與剃頭シ著セシム二袈裟ヲ一。酒醒テ驚怪シ。見テ三身ノ變異
忽チ爲ルヲ二比丘ト一。即チ便チ走リ去ル。諸ノ比丘問タテマツルレ佛ニ。
何ヲ以テ聽二醉婆羅門ヲ一。而作シ玉フヤ二比丘ト一。而モ今マ
歸リ去レリ。佛言ハク。此ノ婆羅門。無量劫中。無シ二出
家ノ心一。今因テ二醉後ニ一。暫ク發ス二微心ヲ一。爲二此ノ縁ノ一
故ニ。後ニ出家セント。如キレ是種種因縁ヲモテ出家ノ破
戒。猶ホ勝レリ二在家ノ持戒ニ一。以テナリ二在家ノ戒ハ一。不ルヲレ爲二
解脱スル
佛化ハ。タタ出家ソレ根本＊ナリ。イマタ出
家セサルハ。佛法ニアラス。如來在世。モ
ロモロノ外道。ステニミツカラカ邪道ヲ
ステテ。佛法ニ歸依スルトキ。カナラスマ
ツ出家ヲコフシナリ。世尊アルヒハミツ
カラ善來比丘トサツケマシマス。アルヒ
ハ諸比丘ニ勅シテ。剃頭鬚髮。出家受戒
セシメマシマスニ。トモニ出家受戒ノ法。
夕チマチニ具足セシナリ。シルヘシ佛化
ステニ身心ニカウフラシムルトキ。頭髮
自落シ。袈裟覆體スルナリ。モシ諸佛イマ
タ聽許シマシマササルニハ＊鬚髮剃除セ
ラレス。袈裟覆體セラレス。佛戒受得セラ
レサルナリ。シカアレハスナハチ出家受
戒ハ。諸佛如來ノ親受記ナリ
釋迦牟尼佛言ハク。諸ノ善男子。如來見テハ下諸ノ衆
生ノ。樂ヘル二於小法ヲ一。徳薄ク垢重キ者ヲ上。爲ニ二是ノ人ノ一
説ク三我レ少
然レトモ我レ實ニ成佛
方便ヲ一。教二化
説ヲ一 シカアレハ久遠實成ハ。我少出家ナ
リ。得阿耨多羅三藐三菩提ハ。我少出家
＊ナリ。我少出家ヲ擧拈スルニ。徳薄垢重
ノ樂小法スル衆生。ナラヒニ我少出家ス
ル＊ナリ。我少出家ノ説法ヲ見聞參學ス
ルトコロニ。見佛阿耨多羅三藐三菩提
ナリ。樂小法ノ衆生ヲ救度スルトキ。爲
是人説我少出家。得阿耨多羅三藐三菩提
ナリ。シカモカクノコトクナリトイフ
トモ。畢竟シテトフヘシ。出家功徳。ソレイ
クラハカリナルヘキソ。カレニムカフテ
イフヘシ頂
正法眼藏出家
爾ノ時寛元四年。丙午九月十五日。在リテ二越
宇永平寺ニ一示スレ衆
Footnote:
Footnote:
Footnote:
Footnote:
Footnote:
Footnote:
Footnote:
Footnote:
Footnote:
Footnote:
267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 [行番号:無/有] [返り点:有/無] [CITE]