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ご挨拶

 人類の叡智は途方もない広がりと奥ゆきをもった現実を創出し、互いに触発しあいながらさまざまなかたちに表現されてきました。このサイトは、アジアを中心に二千五百年の歳月をかけて伝承され、『大正新脩大蔵経』として結実した仏教の智慧を広く世界に開き出すとともに、それをめぐって人びとが触れあいながら、あらたな知を生み出す場となることを目指して、運営されています。

 ほんらい信仰の対象である仏典を発信するという営みには、いくつかの異なった立場がありうるでしょう。そうしたなかでこのサイトは、特定の宗派教義に立脚することなく、宗教の制約さえ離れて、学術的に最高度の質の情報として、可能な限り歴史的な事実に即したかたちで、仏典とそれにかんする研究とを提供することを目的としています。

 あらゆる価値判断が正当になされる前提には、さまざまな様態を持つ、存在するかぎりの情報が、あたう限り客観的に、しかも理解可能な一定の構造のもとに、提供されつづけることが必要です。

 このサイトは、『大正新脩大蔵経』テキストデータベースを一次情報として発信しつつ、このテキストにかんする研究の成果を一定の基準にしたがって吟味したうえで二次情報として連結し、それによって仏典とそれをめぐる研究とが、同時に把握されるよう配慮がなされています。

 歴史の進展、学問の進歩とともに細分化し、多様化して見えにくくなった仏教をめぐる知の断片は、この大きな一世界に再度集約され、利用可能なかたちで再現されることになります。

 歴史の辛酸を経験しながら、こんにちまで生き抜いてきた人びとの身に寄り添ってきた仏典の一大集成は、今後もあらたなかたちを取りながら、未来に向かって継承されてゆくでありましょう。本サイトがこうした努力の一端を担いうるなら、このプロジェクトに関わってきた者たちすべての、心からの慶びとするところであります。

平成20年4月1日
大蔵経テキストデータベース研究会
代表委員・下田正弘