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Digital Scholarly Editions: Manuscripts, Texts, and TEI Encoding参加報告

塚越柚季(東京大学大学院人文社会系研究科)

 2019年4月1日から5日までイタリアのストレーザで行われた SCUSI Spring school に参加した。TEI によるテクスト校訂を主に、EVT や Gephi などツールの紹介や、これらを実際に手を動かしつつ講義を受けたり、参加者が各々持ち込んだプロジェクトに打ち込んだりした。レクチャーの中では、スタッフの先生たちがどのような研究プロジェクトに関わっているかも知ることができたため、人文情報学の研究の可能性が覗い知れた。また、参加にあたって全員がオンライン講座を事前に受講し、そこでTEIによるマークアップ方法を身に着けた上で参加している。そのため、予め自身の取り組むプロジェクトの抱える問題点を明確にしながら、合宿に参加し教えを請うこともできた。個人的な都合により最終日には参加できず、一部の参加者らによる成果の発表を聞けなかったのは残念である。しかしながらこの分野で世界を先導する研究者らによる有意義なレクチャーはもちろんのこと、自らの専門に加えて人文情報学にも身を置く他の学生らとの交流は、この分野に馴染んで間もない自分を鼓舞するものであった。

 当日はまず初めに、TEI の入門から始まった。エクササイズを交えながら、マークアップの基本や校訂版の作り方を学んだ。レクチャーの内容はテクストエンコーディングにとどまらない。エンコーディングしたテクストの視覚化のための EVT や VisColl、ネットワーク分析のための Gephi といったツールも、実際に使いながら教示してくれた。

 講義や各々の作業だけでなく文書館を訪れて文献を見に行く機会もあった。2日目には宿泊地近くのマッジョーレ湖に浮かぶベッラ島を訪問し、島内のボッロメオ宮殿の観光に加えて、ボッロメオ家所蔵の古文献を閲覧した。そこでは実際に触れながら中身を見ることもできるという貴重な体験だった。また3日目にはミラノに赴き、アンブロジアーナ図書館では、当館スタッフが所蔵文献の紹介を行ってくれた。このように実物の文献を目のあたりにすることは、テクストの校訂に携わったことのない私にとって新鮮な経験だった。