INBUDS
顯正流義鈔 (No. 2673_ 眞慧撰 ) in Vol. 83
![[First]](first.gif)
![[Prev]](prev.gif)
841 842 843 844 845 846 ![[]](nextg.gif)
![[Last]](last.gif)
[行番号:無/有] [返り点:有/無] [CITE]
機トモ。即往生トモ。難思議往生トモ。大
經往生トモ云ナリ
顯正流義鈔卷下
第十九願ニ云。設我得レ佛。十方衆生發二菩提
心一修二諸功徳一。至心發願欲レ生二我國一。臨二命終
時一。假令不下與二大衆一圍遶現中其人前上者不レ取二
正覺一ト云リ。當流ノ聖人。コノ願成就ノ文
ト云ハ即三輩ノ文コレナリ。又觀經ノ定
散九品ノ文コレナリトノタマヘリ。願文
アキラカニ修諸功徳ト誓。祖師マサニ三
輩ノ諸善九品ノ諸行ヲサシテコノ願ノ成
就ト釋ス。機ヲ云ヘハ邪定聚ノ人臨終來
迎ヲ期ス諸行往生ノ機。至心發願欲生ノ
機ナリ。又便往生トモ。雙樹林下往生ト
モ。觀經往生トモ。十九ノ願ノ機トモ云
ナリ。何ソ念佛ニテタスカラントタシナ
ムヲコノ願ノ意ナリト云ヤ。第二十ノ願
ニ云。設我得レ佛。十方衆生聞二我名號一。係二念
我國一。植二諸徳本一。至心回向欲レ生二我國一。不二果
遂一者不レ取二正覺一ト云リ。コノ願ノ意ハ。信
シ行スルコトアタハスト云ヘトモ。何ト
ナク耳ニ名號ヲフレ。又極樂ト云ヘハ深
ネカフコトハナケレトモ。一旦マイラハ
ヤト念ヲカケ。一旦ノソミヲナシ。スヱ
ヲモトホサヌモノアリ。或ハ名聞ニ信ス
ル顏ヲシ。或ハ利養ニ行スルフリヲスル
モノコレアリ。結縁ノ類ナリ。マコトニ
不定聚ノ機。至心回向欲生ノ機。二十ノ
願ノ機ナリ。又往生ヲ云ヘハ難思往生ナ
リ。彌陀經往生ナリ。カクノコトク正定
ノ行ヲ不定ニオモヒテ。順次ノ往生ヲセ
サルナリ。然トイヘトモ。其結縁ステカ
タクオホシメサレテ。三生ニ必タスケン
ト願ヲオコシ。不果遂者ト誓タマヘリ。上
ニ云カ如。十八ハ念佛往生。十九ハ諸行
往生。二十ハ結縁往生ナリ。コノ三願ノ
意趣如此。往生ノスカタ三願ニワタリタ
レトモ。其差別天ト地トナリ。其故ハ。第
十八ハ稱名信心ノ行者。攝機生因ノ二ノ
力ニテ。本願眞實ノ報土ニ往生ス。コレ
他力ノ正意ナリ。第十九ハ修諸功徳ノ行
者ナリ。コレ生因本願ノ機ニ非カ故ニ。攝
機ノ力ハカリニテ方便化土ニ往生ス。コ
レ他力ノ傍益ナリ。第二十ハ定散自力ノ
行者係念遠縁ノ姿也。然ニ十九･二十ノ願
ノ機モ。第十八願ノ機ニナラテハ。眞實
報土ニハイタラヌナリ。マコトニマコト
ニ。實報華王ノ寶國ハ。源名號所成ノ報
土ナルカ故ニ。生スル種モ稱名ナリ。倩
此理ヲ案スルニ。阿彌陀ノ三字ハ。希有
最勝ノ華文･無上甚深ノ法體ナリ。言語モ
斷･心行モ不レ及。果分ノ上ノ果分･不可思議
ノ上ノ不可思議ナリ。但コノ三願ヲ三經
ニ配當シ。三往生ニ當。三定聚ニ配當ス
ルコトハ。コノ流ノ義ナリ。ヨクヨク後
學明メヨ。又彼邪義聽聞ノ人問云。繪像
木像ハ方便ナリ。コレヲタノミテ益ナシ。
代代相承ノ念佛ノ血脈ヲタタスコトナカ
レ。只我云トコロノ念佛ニテタスカラン
ト思ハ自力ナリ。又諸行往生ノ意ナリ。又
十九ノ願ナリ。カク心得ルヲ善知識ト云。
コノ義ヲタツルヲ直説聖人ト云ト。コノ
コト如何。答。此尋甚非ナリ。マツ繪像木像
ヲスツルコトハ五逆ノ罪人ナリ。ツキニ
念佛相承ノ血脈ヲステサセ。經論釋義ヲ
ソムキ。新義ヲ云テ正義ト號スル。コレ
マサニ謗法ノ人ナリ。傳聞。昔我朝ニ守
屋ノ大臣コソ。佛像經卷ヲ燒ステ。皇太
子ニ敵ヲナス。中古日蓮法師コソ。念佛
ヲ無間業ト立。又方便ノ教ト云。今新義
ヲ立テ佛法ト號シテ人ヲススムルヤカ
ラ。モハラ繪木ノ佛像ヲステ。皇太子ノ尊
形ヲノケ。念佛方便ト云。豈彼同類ニ非
スヤ。哀哉ヤ。紅蓮大紅蓮ハ彼カ永棲家ナ
ルヘシ。焦熱大焦熱ハカノ黨類ノ所居タ
ルヘシ。可レ恐可レ恐。不レ可レ親不レ可レ親。抑繪
木ノ佛像ト云ハ。忝モ住持三寶ノ中ノ佛
寶ナレハ。三國傳來ノ大師先徳。イツレ
カコレヲアカメサリシソ。法然･親鸞ハ。彌
陀ノ繪像木像ヲハ。淨土ノ報佛ノ如來ト
アカメタテマツレトノタマヘリ。選擇集
ニ恭敬修ヲ明トシテ。有縁ノ像教ヲ敬ト
釋ス。コノ意ナリ。何ソ口ニハ他力ノ行
者ト云テ。彌陀ノ本尊ヲノケ。形ヲハ佛
法者トナシテ。弘通ノ恩ヲ不知シテ。皇
太子ノ形像ヲスツルヤ。佛法ノ大恩ヲ報
センカタメニ。傍ニ皇太子ヲ崇敬スト。鸞
聖人ノ仰セラレシニヨリテ。彼法流ヲ汲
者。多分太子ヲ祖師トシテ本尊ニ崇。或
ハ傍ニ立。コレ相承ニオヒテ依用相承･血
脈相承ノ二アリ。其依用相承ノ義ナリ。イ
ツレノ宗カ佛法ノ弘通ヲ知ン人。繪木ノ
佛像ヲステ。皇太子ヲソシリタテマツル
ヘキ。且親鸞聖人當流弘通ノ始ハ。坂東
常陸ノ國笠間稻田ト云處ナリ。彼寺ノ本
尊聖徳太子ニマシマスナリ。コレ今ニア
リ。流義ノ聖人ステニ太子ヲ本尊トシテ
佛法ヲヒロメハシメタマフナリ。其吾祖
師ノ御在世ノヤウヲタニモ不知身ニテ。
當流ノ是非ヲ沙汰シ。多ノ人ヲ惑スコト。
豈天魔ノ障礙･波旬ノ所行ニ非スヤ。俯惟。
泥木素像ト云ハ。凡夫ノ肉眼ヲ以ヨリ感
見マウシテ無上ノ勝利ヲ得。黄卷朱軸ハ。
我等衆生ノ情度ニ應シテ益ヲ與。剃髮染
衣ハ。佛法増進ノ姿ナレハ。見信ノモノ
功徳ヲ獲得セスト云コトナシ。敢忽思コ
トナカレ。次ニ念佛ノ血脈ヲステサスル
コト。コレマサニ淺猿キコトナリ。西天
ノ佛法今東域ニ將來シテ。八宗九宗十宗
ニ分タリト云トモ。何ノ宗ニカ代代ノ師
ヲ捨血脈イルマシキト立ルヤ。其上當宗
ノ意ハ。彌陀ノ本願･釋尊ノ附屬。阿難舍利
弗ウケタマヒシヨリ以來。傳持ノ旨ヲ今
ニマタクスルトコロナリ。爰以選擇集ニ
ハ。第一章ニハ宗ノ教相ヲ明シ血脈ヲア
ラハスナリ。教行證ニハ。行卷ニ血脈ヲ
アケテ。六卷流通分ニ。我空聖人ヨリノ
御相承ヲ委シタマヘリ。彼文ニ云。シカ
ルニ愚禿釋鸞。建仁辛酉ノ歳。雜行ヲ捨
テ本願ニ歸シ。元久乙丑ノ歳。恩恕ヲカ
フリテ選擇ヲ書シキ。同年初夏中旬第四
日ニ。選擇本願念佛集ノ内題ノ字。并ニ
南無阿彌陀佛往生之業念佛爲本ト。釋綽
空ノ字ト。空ノ眞筆ヲモテコレヲ書シメ
タマフ。同日空ノ眞影申アツカリテ。圖
畫シタテマツル。同二年閏七月下旬第九
日。眞影ノ銘眞筆ヲモテ。南無阿彌陀佛
ト若我成佛十方衆生稱我名號下至十聲若
不生者不取正覺彼佛今現在成佛當知本誓
重願不虚衆生稱念必得往生ノ眞文ヲカカ
シメ。又夢ノ告ニヨリテ綽空ノ字ヲ改テ。
同日御筆ヲモテ名ノ字ヲカカシメヲハリ
ヌ。本師聖人今年七旬三ノ御歳ナリ。選擇
命ニヨリテエラヒアツムルトコロナリ。
眞宗ノ簡要･念佛ノ奧義。コレニ攝在セリ。
見者サトリヤスシ。マコトニコレ希有最
勝ノ華文･無上甚深ノ寶典ナリ。年ヲ渉リ
日ヲ渉リテ其教誨ヲ蒙ル人千萬ナリト云
トモ。親ト云疎ト云。此見寫ヲ獲ル徒。甚
モテカタシ。シカルニステニ製作ヲ書寫
シ。眞影ヲ圖畫シタテマツル。是惠念正業
ノ徳ナリ。是決定往生ノ徴ナリ。仍悲喜
ノ涙ヲオサヘテ。由來ノ縁ヲ註トイヘリ。
コノ御傳持ノムネニマカセテ。當流聖
十一日。入西坊ヲ願主トシテ。繪師定禪
法橋ニ。ワカ影ヲ寫サシメタマウ。同
定禪モ夢想ノ告アリ。爾ニ八十三ノ御歳。
カノ眞影ニ自筆ヲモテ。大無量壽經言。設
我得レ佛。十方衆生至心信樂欲レ生二我國一。乃
至十念。若不レ生者不レ取二正覺一。唯除二五逆誹
謗正法一。又言。其佛本願力。聞レ名欲二往生一。皆
悉到二彼國一。自致二不退轉一。又言。必得三超絶去
往二生安養國一。横截二五惡趣一。惡趣自然閉。昇
レ道無二窮極一。易レ往而無レ人。其國不二逆違一。自然
之所レ牽。無量壽經優婆提舍願生偈。婆藪般
豆菩薩造曰。世尊我一心歸二命盡十方無礙
光如來一。願レ生二安樂國一。我依二修多羅眞實功
徳相一。説二願偈總持一。與二佛教一相應。觀二彼世界
相一。勝二過三界道一。究意如二虚空一。廣大無二邊際一。
又曰。觀二佛本願力一。遇無二空過者一。能令三速滿二
足功徳大寶海一。和朝釋親鸞法師正信偈曰。
本願名號正定業。至心信樂願爲レ因。成二等
覺一證二大涅槃一。必至滅度願成就。如來所三以
興二出世一。唯説二彌陀本願海一。五濁惡時群生
海。應レ信二如來如實言一。能發二一念喜愛心一。不
レ斷二煩惱一得二涅槃一。凡聖逆謗齊回入。如二衆水
入レ海一味一。攝取心光常照護。已能雖レ破二無
明闇一。貪愛瞋憎之雲霧。常覆二眞實信心天一。譬
如下日光覆二雲霧一。雲霧之下明爲
闇。獲レ信見
敬大慶喜。即横超二截五惡趣一。愚禿親鸞八十
三歳ト銘文ヲアソハシ。又撰集シタマフ
トコロノ教行證一部六卷眞筆ニ書シ。建
長七年乙卯冬ノコロ。眞佛上人･顯智上人
ニナラヘテアタヘタマフ。コレマコトニ
附法相承ノ義顯然ナリ。鸞聖人ノ直弟多
トイヘトモ。親ト云疎ト云。御眞影ヲタ
マハリ。自筆ニ銘文ヲカカシメ。眞筆ノ
製作傳授アルコト無之。嫡弟ト云附法ト
云。相承血脈ノ義。タレカコレヲアラソ
ハンヤ。御自筆ノ教行證。御自筆ノ銘文
ノ御影。于今傳持ス。ユメユメ繪木ノ佛像
ヲステ。血脈イルヘカラスト立ル義ヲ。本
ニスルコトナカレ。コレマサシク祖師聖
ノ心ニツノリ。利養ノ酒ニ醉テ名聞ニク
ルフモノノ。口ニマカセテ云コトナリ。今
アクルトコロノ三箇條ノ尋ハ。中中返答
ニオヨハス。筆點ニ記ニアタハストイヘ
トモ。世間ニ流布シテ。在家無智ノ尼入
道ヲトモナヒイヒサタスルナレハ。彼カ
謬ノホトヲモシラセ。又往生ノ信心ヲモ
治定セシメンカタメ。且ハ破邪顯正ハ佛
ノ本意。捨謬開悟ハ法ノ大途ナレハ。紙
ヲトリ毫ヲ染テ。祖師相承ノ義趣ニ順シ。
年來披見ノ聖教ニ任テ。カタノコトク草
案註記ス。自今已後モ。一宗一流ノ行者。
彌陀･釋迦･善導･源空･親鸞ノ御本意ノコト
ク。一心一向ニモハラ名號ヲ稱念シ。更ニ
餘行ヲ不レ雜ススメン人ヲ。眞ノ善知識ト
タノムヘシ。能能意ヲ得ヨ。祖師親鸞聖
人ノ御流ヲ承ンモノ。コノ疏ノウヘニ不
審アラハ。我慢偏執ノ心ヲヤメ。穩便無
事ノ姿ニテ。族宿ノ草庵ニ來リテ尋ヨ。シ
カラハ鸞聖人ノ御在世ノオキテニ任。眞
佛･顯智ノ御相傳ノムネヲモテ。經論釋ヲ
證トシテ決判ニオヨハン。尚尚コノ三箇
條ノ難勢。イツレモマコトシカラスト云
トモ。風聞ニマカセテコレヲシルス。其
外善導大師･法然聖人ノ疏釋。當流ニハイ
ルヘカラスト云。又念佛ニテ亡者トフラ
ウハ自力ナリト云。邊地ヨリ地獄ニ墮ト
云。如レ此ノ新義キコユ。以ノ外ノ存外ナリ。
中中筆ニシルスニアタハス。マコトニア
サマシキコトナリ。コレ管見推量ノ邪智
ノ義ナリ。アヒカマヘテ信用スヘカラス
于時文明四年壬辰二月二十日
釋眞慧記之
經往生トモ云ナリ
| 顯正流義鈔上 | 終 |
第十九願ニ云。設我得レ佛。十方衆生發二菩提
心一修二諸功徳一。至心發願欲レ生二我國一。臨二命終
時一。假令不下與二大衆一圍遶現中其人前上者不レ取二
正覺一ト云リ。當流ノ聖人。コノ願成就ノ文
ト云ハ即三輩ノ文コレナリ。又觀經ノ定
散九品ノ文コレナリトノタマヘリ。願文
アキラカニ修諸功徳ト誓。祖師マサニ三
輩ノ諸善九品ノ諸行ヲサシテコノ願ノ成
就ト釋ス。機ヲ云ヘハ邪定聚ノ人臨終來
迎ヲ期ス諸行往生ノ機。至心發願欲生ノ
機ナリ。又便往生トモ。雙樹林下往生ト
モ。觀經往生トモ。十九ノ願ノ機トモ云
ナリ。何ソ念佛ニテタスカラントタシナ
ムヲコノ願ノ意ナリト云ヤ。第二十ノ願
ニ云。設我得レ佛。十方衆生聞二我名號一。係二念
我國一。植二諸徳本一。至心回向欲レ生二我國一。不二果
遂一者不レ取二正覺一ト云リ。コノ願ノ意ハ。信
シ行スルコトアタハスト云ヘトモ。何ト
ナク耳ニ名號ヲフレ。又極樂ト云ヘハ深
ネカフコトハナケレトモ。一旦マイラハ
ヤト念ヲカケ。一旦ノソミヲナシ。スヱ
ヲモトホサヌモノアリ。或ハ名聞ニ信ス
ル顏ヲシ。或ハ利養ニ行スルフリヲスル
モノコレアリ。結縁ノ類ナリ。マコトニ
不定聚ノ機。至心回向欲生ノ機。二十ノ
願ノ機ナリ。又往生ヲ云ヘハ難思往生ナ
リ。彌陀經往生ナリ。カクノコトク正定
ノ行ヲ不定ニオモヒテ。順次ノ往生ヲセ
サルナリ。然トイヘトモ。其結縁ステカ
タクオホシメサレテ。三生ニ必タスケン
ト願ヲオコシ。不果遂者ト誓タマヘリ。上
ニ云カ如。十八ハ念佛往生。十九ハ諸行
往生。二十ハ結縁往生ナリ。コノ三願ノ
意趣如此。往生ノスカタ三願ニワタリタ
レトモ。其差別天ト地トナリ。其故ハ。第
十八ハ稱名信心ノ行者。攝機生因ノ二ノ
力ニテ。本願眞實ノ報土ニ往生ス。コレ
他力ノ正意ナリ。第十九ハ修諸功徳ノ行
者ナリ。コレ生因本願ノ機ニ非カ故ニ。攝
機ノ力ハカリニテ方便化土ニ往生ス。コ
レ他力ノ傍益ナリ。第二十ハ定散自力ノ
行者係念遠縁ノ姿也。然ニ十九･二十ノ願
ノ機モ。第十八願ノ機ニナラテハ。眞實
報土ニハイタラヌナリ。マコトニマコト
ニ。實報華王ノ寶國ハ。源名號所成ノ報
土ナルカ故ニ。生スル種モ稱名ナリ。倩
此理ヲ案スルニ。阿彌陀ノ三字ハ。希有
最勝ノ華文･無上甚深ノ法體ナリ。言語モ
斷･心行モ不レ及。果分ノ上ノ果分･不可思議
ノ上ノ不可思議ナリ。但コノ三願ヲ三經
ニ配當シ。三往生ニ當。三定聚ニ配當ス
ルコトハ。コノ流ノ義ナリ。ヨクヨク後
學明メヨ。又彼邪義聽聞ノ人問云。繪像
木像ハ方便ナリ。コレヲタノミテ益ナシ。
代代相承ノ念佛ノ血脈ヲタタスコトナカ
レ。只我云トコロノ念佛ニテタスカラン
ト思ハ自力ナリ。又諸行往生ノ意ナリ。又
十九ノ願ナリ。カク心得ルヲ善知識ト云。
コノ義ヲタツルヲ直説聖人ト云ト。コノ
コト如何。答。此尋甚非ナリ。マツ繪像木像
ヲスツルコトハ五逆ノ罪人ナリ。ツキニ
念佛相承ノ血脈ヲステサセ。經論釋義ヲ
ソムキ。新義ヲ云テ正義ト號スル。コレ
マサニ謗法ノ人ナリ。傳聞。昔我朝ニ守
屋ノ大臣コソ。佛像經卷ヲ燒ステ。皇太
子ニ敵ヲナス。中古日蓮法師コソ。念佛
ヲ無間業ト立。又方便ノ教ト云。今新義
ヲ立テ佛法ト號シテ人ヲススムルヤカ
ラ。モハラ繪木ノ佛像ヲステ。皇太子ノ尊
形ヲノケ。念佛方便ト云。豈彼同類ニ非
スヤ。哀哉ヤ。紅蓮大紅蓮ハ彼カ永棲家ナ
ルヘシ。焦熱大焦熱ハカノ黨類ノ所居タ
ルヘシ。可レ恐可レ恐。不レ可レ親不レ可レ親。抑繪
木ノ佛像ト云ハ。忝モ住持三寶ノ中ノ佛
寶ナレハ。三國傳來ノ大師先徳。イツレ
カコレヲアカメサリシソ。法然･親鸞ハ。彌
陀ノ繪像木像ヲハ。淨土ノ報佛ノ如來ト
アカメタテマツレトノタマヘリ。選擇集
ニ恭敬修ヲ明トシテ。有縁ノ像教ヲ敬ト
釋ス。コノ意ナリ。何ソ口ニハ他力ノ行
者ト云テ。彌陀ノ本尊ヲノケ。形ヲハ佛
法者トナシテ。弘通ノ恩ヲ不知シテ。皇
太子ノ形像ヲスツルヤ。佛法ノ大恩ヲ報
センカタメニ。傍ニ皇太子ヲ崇敬スト。鸞
聖人ノ仰セラレシニヨリテ。彼法流ヲ汲
者。多分太子ヲ祖師トシテ本尊ニ崇。或
ハ傍ニ立。コレ相承ニオヒテ依用相承･血
脈相承ノ二アリ。其依用相承ノ義ナリ。イ
ツレノ宗カ佛法ノ弘通ヲ知ン人。繪木ノ
佛像ヲステ。皇太子ヲソシリタテマツル
ヘキ。且親鸞聖人當流弘通ノ始ハ。坂東
常陸ノ國笠間稻田ト云處ナリ。彼寺ノ本
尊聖徳太子ニマシマスナリ。コレ今ニア
リ。流義ノ聖人ステニ太子ヲ本尊トシテ
佛法ヲヒロメハシメタマフナリ。其吾祖
師ノ御在世ノヤウヲタニモ不知身ニテ。
當流ノ是非ヲ沙汰シ。多ノ人ヲ惑スコト。
豈天魔ノ障礙･波旬ノ所行ニ非スヤ。俯惟。
泥木素像ト云ハ。凡夫ノ肉眼ヲ以ヨリ感
見マウシテ無上ノ勝利ヲ得。黄卷朱軸ハ。
我等衆生ノ情度ニ應シテ益ヲ與。剃髮染
衣ハ。佛法増進ノ姿ナレハ。見信ノモノ
功徳ヲ獲得セスト云コトナシ。敢忽思コ
トナカレ。次ニ念佛ノ血脈ヲステサスル
コト。コレマサニ淺猿キコトナリ。西天
ノ佛法今東域ニ將來シテ。八宗九宗十宗
ニ分タリト云トモ。何ノ宗ニカ代代ノ師
ヲ捨血脈イルマシキト立ルヤ。其上當宗
ノ意ハ。彌陀ノ本願･釋尊ノ附屬。阿難舍利
弗ウケタマヒシヨリ以來。傳持ノ旨ヲ今
ニマタクスルトコロナリ。爰以選擇集ニ
ハ。第一章ニハ宗ノ教相ヲ明シ血脈ヲア
ラハスナリ。教行證ニハ。行卷ニ血脈ヲ
アケテ。六卷流通分ニ。我空聖人ヨリノ
御相承ヲ委シタマヘリ。彼文ニ云。シカ
ルニ愚禿釋鸞。建仁辛酉ノ歳。雜行ヲ捨
テ本願ニ歸シ。元久乙丑ノ歳。恩恕ヲカ
フリテ選擇ヲ書シキ。同年初夏中旬第四
日ニ。選擇本願念佛集ノ内題ノ字。并ニ
南無阿彌陀佛往生之業念佛爲本ト。釋綽
空ノ字ト。空ノ眞筆ヲモテコレヲ書シメ
タマフ。同日空ノ眞影申アツカリテ。圖
畫シタテマツル。同二年閏七月下旬第九
日。眞影ノ銘眞筆ヲモテ。南無阿彌陀佛
ト若我成佛十方衆生稱我名號下至十聲若
不生者不取正覺彼佛今現在成佛當知本誓
重願不虚衆生稱念必得往生ノ眞文ヲカカ
シメ。又夢ノ告ニヨリテ綽空ノ字ヲ改テ。
同日御筆ヲモテ名ノ字ヲカカシメヲハリ
ヌ。本師聖人今年七旬三ノ御歳ナリ。選擇
| 本願念佛集ト云ハ。禪定博陸 | 月輪殿兼實 法名圓昭 | ノ教 |
眞宗ノ簡要･念佛ノ奧義。コレニ攝在セリ。
見者サトリヤスシ。マコトニコレ希有最
勝ノ華文･無上甚深ノ寶典ナリ。年ヲ渉リ
日ヲ渉リテ其教誨ヲ蒙ル人千萬ナリト云
トモ。親ト云疎ト云。此見寫ヲ獲ル徒。甚
モテカタシ。シカルニステニ製作ヲ書寫
シ。眞影ヲ圖畫シタテマツル。是惠念正業
ノ徳ナリ。是決定往生ノ徴ナリ。仍悲喜
ノ涙ヲオサヘテ。由來ノ縁ヲ註トイヘリ。
コノ御傳持ノムネニマカセテ。當流聖
| 人 | 親鸞 | 七十ノ御歳。仁治三年壬寅五月二 |
法橋ニ。ワカ影ヲ寫サシメタマウ。同
定禪モ夢想ノ告アリ。爾ニ八十三ノ御歳。
カノ眞影ニ自筆ヲモテ。大無量壽經言。設
我得レ佛。十方衆生至心信樂欲レ生二我國一。乃
至十念。若不レ生者不レ取二正覺一。唯除二五逆誹
謗正法一。又言。其佛本願力。聞レ名欲二往生一。皆
悉到二彼國一。自致二不退轉一。又言。必得三超絶去
往二生安養國一。横截二五惡趣一。惡趣自然閉。昇
レ道無二窮極一。易レ往而無レ人。其國不二逆違一。自然
之所レ牽。無量壽經優婆提舍願生偈。婆藪般
豆菩薩造曰。世尊我一心歸二命盡十方無礙
光如來一。願レ生二安樂國一。我依二修多羅眞實功
徳相一。説二願偈總持一。與二佛教一相應。觀二彼世界
相一。勝二過三界道一。究意如二虚空一。廣大無二邊際一。
又曰。觀二佛本願力一。遇無二空過者一。能令三速滿二
足功徳大寶海一。和朝釋親鸞法師正信偈曰。
本願名號正定業。至心信樂願爲レ因。成二等
覺一證二大涅槃一。必至滅度願成就。如來所三以
興二出世一。唯説二彌陀本願海一。五濁惡時群生
海。應レ信二如來如實言一。能發二一念喜愛心一。不
レ斷二煩惱一得二涅槃一。凡聖逆謗齊回入。如二衆水
入レ海一味一。攝取心光常照護。已能雖レ破二無
明闇一。貪愛瞋憎之雲霧。常覆二眞實信心天一。譬
如下日光覆二雲霧一。雲霧之下明爲
闇。獲レ信見敬大慶喜。即横超二截五惡趣一。愚禿親鸞八十
三歳ト銘文ヲアソハシ。又撰集シタマフ
トコロノ教行證一部六卷眞筆ニ書シ。建
長七年乙卯冬ノコロ。眞佛上人･顯智上人
ニナラヘテアタヘタマフ。コレマコトニ
附法相承ノ義顯然ナリ。鸞聖人ノ直弟多
トイヘトモ。親ト云疎ト云。御眞影ヲタ
マハリ。自筆ニ銘文ヲカカシメ。眞筆ノ
製作傳授アルコト無之。嫡弟ト云附法ト
云。相承血脈ノ義。タレカコレヲアラソ
ハンヤ。御自筆ノ教行證。御自筆ノ銘文
ノ御影。于今傳持ス。ユメユメ繪木ノ佛像
ヲステ。血脈イルヘカラスト立ル義ヲ。本
ニスルコトナカレ。コレマサシク祖師聖
| 人 | 親鸞 | ノ御オキテヲシラスシテ偏見我慢 |
ルフモノノ。口ニマカセテ云コトナリ。今
アクルトコロノ三箇條ノ尋ハ。中中返答
ニオヨハス。筆點ニ記ニアタハストイヘ
トモ。世間ニ流布シテ。在家無智ノ尼入
道ヲトモナヒイヒサタスルナレハ。彼カ
謬ノホトヲモシラセ。又往生ノ信心ヲモ
治定セシメンカタメ。且ハ破邪顯正ハ佛
ノ本意。捨謬開悟ハ法ノ大途ナレハ。紙
ヲトリ毫ヲ染テ。祖師相承ノ義趣ニ順シ。
年來披見ノ聖教ニ任テ。カタノコトク草
案註記ス。自今已後モ。一宗一流ノ行者。
彌陀･釋迦･善導･源空･親鸞ノ御本意ノコト
ク。一心一向ニモハラ名號ヲ稱念シ。更ニ
餘行ヲ不レ雜ススメン人ヲ。眞ノ善知識ト
タノムヘシ。能能意ヲ得ヨ。祖師親鸞聖
人ノ御流ヲ承ンモノ。コノ疏ノウヘニ不
審アラハ。我慢偏執ノ心ヲヤメ。穩便無
事ノ姿ニテ。族宿ノ草庵ニ來リテ尋ヨ。シ
カラハ鸞聖人ノ御在世ノオキテニ任。眞
佛･顯智ノ御相傳ノムネヲモテ。經論釋ヲ
證トシテ決判ニオヨハン。尚尚コノ三箇
條ノ難勢。イツレモマコトシカラスト云
トモ。風聞ニマカセテコレヲシルス。其
外善導大師･法然聖人ノ疏釋。當流ニハイ
ルヘカラスト云。又念佛ニテ亡者トフラ
ウハ自力ナリト云。邊地ヨリ地獄ニ墮ト
云。如レ此ノ新義キコユ。以ノ外ノ存外ナリ。
中中筆ニシルスニアタハス。マコトニア
サマシキコトナリ。コレ管見推量ノ邪智
ノ義ナリ。アヒカマヘテ信用スヘカラス
于時文明四年壬辰二月二十日
釋眞慧記之
| 正徳四年 | 甲午 | 歳二月良辰 |
Footnote:
Footnote:
Footnote:
Footnote:
Footnote:
Footnote:
Footnote:
Footnote:
Footnote:
Footnote: